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パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
父として幼き者は見上げ居り、ねがわくは金色の獅子とうつれよ。

佐佐木 幸綱 (歌人、早稲田大学教授)

PROFILE(ささき ゆきつな)
 1938年東京生まれ。河出書房新社で『文芸』の編集長を務めた後、母校・早稲田大学の助教授を経て、教授。祖父・信綱氏が創刊した歌誌『心の花』の編集長を務める。著書に『金色の獅子』など。

佐佐木 幸綱

   父として幼き者は見上げ居り
      ねがわくは金色の獅子とうつれよ

 この短歌のように、私の作品には「父と息子」をテーマにしたものが多くあります。
 同じく歌人であった祖父・信綱、父・治綱、そして私が幸綱と、代々名前に”綱”がついています。
 学生時代に、寺山修司さん(歌人・故人)から、「息子が生まれたら、絶対に”綱”のつく名前をつけろよ」と言われたことがあります。もちろんまだ結婚もしていませんでしたから、びっくりしたことを覚えています。
 実際に、長男は頼綱、次男は定綱と名付けましたが、そうすることで、先祖から受け継いだ時間軸を共有できているのかもしれません。その時間軸について詠んだのが

   祖父・父・我・我・息子・孫、
      唱うれば「我」という語の思わぬ軽さ

という歌です。
 子育てといっても、意識して何かをしたことはありません。子どもが生まれたときは教師をしていて、比較的時間に余裕があったものですから、子どもたちとはよく遊びました。長男のときはおむつを抱えて飛行機に乗ったり、講演先に連れて行ったりもしました。十年ほど前に一年間オランダで暮らしたときは、長男が学校に行っている間、まだ幼い次男をスケートに連れて行ったものでした。ほかにも、みんなで泳ぎやスキーなど季節のスポーツを楽しんだり、家の近くの多摩川で釣りをしたりしました。七歳も年が離れていますが、おかげで兄弟仲良くやっています。
 私は、子どもに対してあれこれうるさいことは言いません。というのも、祖父からの締め付けが厳しかった反動なのか、私は父から自由放任で育てられ、それがよかったと思っているからです。
 最近は、危険なことをやめさせる親が多いようですが、私は息子たちに、「川で泳ぐな」とか、「木に登るな」とは言いませんでした。木から落ちたっていいじゃないか、というのが私の考え方です。子どもというのは、親が育てるものではなくて、自分で育つものですからね、子どもに夢中になり過ぎない方がいいでしょう。
 父親の母親化、母親の父親化によって、父親あるいは母親の役割を果たす人間が二人いる家庭が増えているような気がします。しかし、子どもに対して母親が教えることと、父親が教えることは違うのではないでしょうか。
 私が息子たちに言うのは、「やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい」ということだけです。これは、良いことでも、悪いことでも同じです。
 親子の仲は良い方ですが、父として、息子たちの壁にならなければいけないと思います。しかも、できるだけ乗り越えにくい壁の方がいいですね。
 息子たちをそっと見守りつつ、いつか彼らに乗り越えてほしいと願っています。

   のぼり坂のペダル踏みつつ子は叫ぶ
      「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ

資料:月刊こども未来

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