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パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
女房の苦労は十分承知。だけど男の子育ては、さじ加減が難しい!

原田 大二郎 (俳優)

PROFILE(はらだ・だいじろう)
1944年山口県出身。明治大学法学部卒業後、文学座入り。映画『裸の十九才』でデビュー。出演作品は、映画『蒲田行進曲』、テレビ『Gメン75』、舞台『にごり江』『坂本龍馬』『元禄港歌』など多数。描画、著述の分野にも進出。現在、明治大学文学部特別招聘教授。

原田 大二郎

 わが子の誕生くらい激しく心揺さぶられるものは、ないね。

 「父親になって初めて見えてくるものがあるんだよ」なんて言われて覚悟はしていたけれど、そりゃ現実のものになってみると想像以上。四〇センチ足らずの赤い小さな生き物が看護婦さんの腕の中で小さな手のひらを握ったり開いたり、小さな唇が物欲しそうにムニャムニャ、それ見た途端、あー、おれは父親なんだ。今日からこいつを食わしていかなきゃいけないんだ。そんな思いに包まれた。

 身体弱くてね、うちの子が。ヒルシュスプルング症ってやつ。つまり結腸巨大症。神経叢が不足してるんで、直腸が十分に発達しない。それで排せつ物が結腸にたまるようになる。だから消化不良を起こして発育不全だ。生後三年間、随分、病院に面倒かけました。「虎太郎君はボクの通院患者・四天王だからね」なんて院長に言われてね。何しろ固形物が口に入るようになったのは四年目からなんですから。風邪引くと、 病院行ってレントゲン。案の定、先生が「肺炎ですね、ご覧なさい真っ白ですよ、肺が」。いつだってこうなんだ。ウンコが出てこないんだ。便秘。真っ白いセメントのようなベンが直腸のとこで踏ん張っている。頭下げさせてね。スプーンでほじくってやる。わんわん泣いている息子にビートルズ聴かせてやりました。そのうち、人に尻ほじらせながら眠っちゃう。彼、いまでもビートルズ聴いてると眠くなるみたい。汚い話ついでに、肺炎でわが子が呼吸困難になっちゃったとき、親なんてその鼻汁をすすっちゃうのなんか平気なモンですよ。ジュル、ジュルすすってベッと吐き出す。

 そんな弱い子だったからね、女房も育児に時間とられっぱなし、三年間、ほとんど一日三時間ほどの睡眠時間しかとれなくて過ごしました。ボクは仕事を口実に早めに眠ってしまうけど、短大の教師やってる彼女はそれから自分の勉強と子どもの世話。どうやら病院の先生が言ったとおり、三年目がヤマだったようで、三年過ぎると子どもは目に見えて丈夫になってきた。「おまえ、ご苦労様だったねぇ、これまで」そう声かけたら、女房「あら、分かってたの?」それだけ言ってそれなり床についてしまった。それまで「あー、畜生、理解のない亭主め」って、そのことだけを心の張りにして頑張ってたんだね、彼女。

 女って母性本能ってやつなんだろうけど、男にはどうしても及ばない愛情で子どもと結ばれていますよね。だからいま「男女同権、夫婦平等の子育て」なんて騒いでいるけど、昔のように「男は自分の背中を見せて子どもを育てる」ってのがいいんじゃないのかなぁ。自分がちょっと子どもに入れ込み過ぎたかなぁという気がするからです。うちの奥さんに言わせると「あんたぐらい子どもの面倒見ない人は珍しいわよ」ってことになるんだけど、ボクの方じゃ、結構、入れ込んじゃってる。そのため子どもが自立していかないというボクの友人たちの評価は正しいんだと思うんですよ。難しいねぇ、男の子育て。

資料:月刊こども未来

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