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パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
ぶつけ合う思いを大切に。じっくり焦らず、自分の世界を探ってほしい。

村上 康成 (絵本作家)

PROFILE(むらかみ やすなり)
1955年岐阜県生まれ。『ピンクのいる山』『星空キャンプ』など数々の創作絵本をはじめ、ワイルド・ライフ・アート、オリジナルグッズなどのグラフィック関連やエッセイなどで独自の世界を展開している。1986・88・89年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、91年ブラチスラバ世界絵本原画ビエンナーレで金牌などを受賞。
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村上 康成

 当時八歳の娘を連れて、米国・モンタナ州でキャンプをしていた時のこと。妻と娘が食事の準備をしているところに野生の鹿がやって来て、二人の間に入ってじっと準備を眺めていました。それを眺めている僕は、自然と一体化した、大きなファミリーを見ていたような気がします。二人は気が付いていないのかな、と合図を送ると、二人ともしっかり気が付いていたようで、まるで一緒に食事作りを楽しんでいるのよ、といった感じでした。

 こんなふうに、僕の大好きなアウトドアでも、家族でいろいろな経験をしてきましたが、仕事柄、家にいる時間が長いこともあって、子どもが生まれた時からいまに至るまで、日常の育児もかなりいい線をいっていたのではないかと思います。

 田舎に帰らずに出産し、すべてを新米の母親と父親で、というのが妻の希望でもあり、毎日びっくりするほど成長していく新生児のころから、子どもへの愛情と父親としての自覚を刷り込まれていったような気がしています。

 八か月ごろから保育園に通園するようになったのですが、ラッシュの中を抱っこした娘が押しつぶされないようにと、電車の窓に手を突っ張る毎日。預けてやっと家に帰り着き、さあ仕事という時に、「熱が出たから迎えに来るように」との呼び出し。いま考えれば、日常の、娘とのそういったかかわりの一コマ一コマが僕のパワーの源になっていたような気がしてなりません。

 二歳のころにはこんなこともありました。大人のまねをしたくなる年ごろでもあり、電車の中で一人で座りたがりました。「立っているお客さんに迷惑だから、席を譲ってひざに座りなさい」「いや」・・・・・・しばらく押し問答を繰り返し、しまいに娘は大泣き。こちらも譲るわけには行かず、泣かせたことの方がよっぽど周りに迷惑だったと思うのですが、筋を曲げるわけにはいかない、ときっぱり押し通したのです。いま考えれば、途中で降りればよかったのですが、あの時はそんな余裕もなく、「ダメなものはダメ」と伝えなければという思いでいっぱいでした。

 自分はどう思うのか、自分の考えはどうなのか、ということについては、現在もお互いかなり言い合っている家族だと思います。ときには、朝、テレビを見ながら娘と激論を戦わせています。「このキャスターは観念論ばかり言っている。じゃ、いったい自分はどう思っているのか!」「なぜ、僕は、でなくて、僕たちは、と一般論にすり替えるのか!」といった具合。「お父さん、文句が多過ぎるんじゃない」などと言ってくることもあり、朝からかなりハイテンションで出かけていく高校生です。

 そんな娘を見ながら、「個をしっかりもって、焦るなよ、大丈夫、自分のやりたいもの、好きなものを見つけろよ」と思っています。

資料:月刊こども未来

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