トップ > 子育ての知恵・読み物 > パパの子育て体験記 陳 健一

子育ての知恵・
読み物

パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
離乳食後すぐに四川の味。”あと継ぎ”は望むなら応援する。

陳 建一 (料理家)

PROFILE(ちん けんいち)
1956年東京都生まれ。日本に初めて中国・四川料理を紹介した故・陳建民氏の長男。東京中華学校、玉川学園(高校・大学)を経て、建民氏の創業した四川飯店グループ入り。テレビ番組『料理の鉄人』『きょうの料理』などに出演。現在、同グループのオーナーシェフとして四川料理の普及や後進の育成に努め、その傍ら、テレビや雑誌、CMなどでも活躍。著書は『中国野菜料理』『鉄人陳建一の中華料理』など。

陳建一

 二人の男の子は、私が料理の世界に入って間もないころに生まれました。見習いのちょっと上といった立場でしたから、朝早くから、夜遅くまで働き通しでしたが、毎日、子どもをふろに入れるのは自分の仕事と決めていました。紙おむつをあてたり、ミルクを作って飲ませたり・・・・・・、どれも「名人」だったと自負しています。

 離乳食の時期が終わって、大人と同じ料理が食べられるようになると、家でもいろいろ手料理を食べさせてやりました。もちろんおやじから受け継いだ四川料理。辛いものが多いですが、麻婆豆腐、麻婆茄子など、二人とも小さいころから大好きでした。特に次男は濃い味が好きで、五、六歳のころ、水餃子のたれ(しょうゆ)を飲んで、「おいしい」と言っていたのには驚かされましたが・・・・・・。

 子どもたちの料理は、私も作りましたが、やはり妻が中心でした。妻はわが家の味、すなわち私のおやじの味も、自分自身の育った家の味も、どちらの味も継承して、たいへんおいしい料理を作ってくれます。”料理の鉄人”ならぬ”鉄女”でしょうか。

 こうして子どもたちに四川の味、わが家の味を、舌で覚えさせ、何が「おいしいもの」なのかを教えてきました。家庭ではもちろん、店でも、「料理は愛情」をモットーとしていますが、こうした愛情のこもった料理で家庭が一つになれることがわが家の自慢です。 子どもたちは、いずれ独立して、自分の稼ぎで生きていかなければならないわけですが、仕事では自分の個性を十分に発揮して、とにかく幸せになってほしいと願っています。この場合、いわゆる成功することが幸せとは限らないでしょう。これまで、少々はみ出したようなこともしてきましたが、あまりにも型にはまり過ぎた「いい子」より、人間らしくていいのではないかと思っています。

 おやじは私に「コックになれ」とは一言も言わず、とにかく一生懸命働いた人です。私もいま、懸命に働いています。そして子どもたちの意思を尊重し、特に「店を継げ」とは言ってきませんでした。好きな道に進めばいい、しかしどんなときにも、人に優しく、人に迷惑をかけず、最低限の社会のルールは守る−これが大前提だ、と。

 とはいえ、いま大学生の長男が「店を継ぎたい」と言っているので、仕事上の知人に会わせたりして、その路線は敷いています。どうせ店に入るのなら早いほうがいい、という考えもありますが、私は、若いうちには、いろいろな世界を見て、いろいろな人と出会って、感性を磨いておく方が大切だと思っているので、まだ厨房には入れていません。

 その長男は、フランスや台湾に留学したいようです。そこで「大いに結構。でも費用の半分は自分で稼ぎなさい」と。お金を含め、親がすべてを与えるのは簡単です。でも、子どもたちには、働くことやお金の大切さ、その価値を、身をもって知ってほしいのです。

資料:月刊こども未来

BackNext