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パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
元気でいてくれさえすればいい

倉田 よしみ (漫画家)

PROFILE(くらた よしみ)
本名・倉田芳美。1954年秋田県生まれ。漫画家・ちばてつや氏のアシスタントを経て、78年「週刊少年サンデー」の『萌え出ずる……』でデビュー。86年ごろから青年誌にも進出。代表作『味いちもんめ』はテレビドラマ化され、第44回小学館漫画賞も受賞(99年)。ほかに主な作品は『4丁目大リーグ』『どんサブ涙ばし』など。

倉田 よしみ

   東京の産院で最初の子が生まれるのを待っていた時、日本海中部沖地震(1983年)のニュースが流れていました。津波にのまれ、多くの子どもたちが犠牲になった地震です。故郷・秋田のことでもあり、一段と落ち着かない気持ちになりました。しかし、そんな不安を吹き飛ばすかのような元気な子が生まれ、歳月がたったいま、その津波にのまれながらも九死に一生を得た小学生の一人が、ぼくの秋田の事務所にコピー機の点検に来てくれています。人の縁とは実に不思議なものです。

 仕事の都合でぼくの生活はどうしても不規則になりがちです。みんなの起きてくるころに、ぼくは布団に入り……という具合です。これでは同居は互いによくないと考え、子どもたちが小さいころから、家とは別に仕事場を借りて、ぼくはそこで寝起きをし、たまに家に帰る−という生活でした。

 そして下の子の小学校入学に合わせて、妻と子どもたちは秋田のぼくの実家近くで生活することにしました。それは、妻も同郷で秋田はよく知っている上、子どもたちに「おじいさん、おばあさんのいる地方暮らし」をさせたかった、という思いからです。特に、東京の核家族では不可能な、おじいさんやおばあさんがいつでも近くにいる生活を体験しておいてほしかったのです。

 東京育ちで、大人になってから地方に移ろうとしてもなかなか難しいでしょう。逆に、自分の経験から、本人の意志さえあれば、地方から東京へはいつでも出て来られるような気がします。まず地方暮らしから始めて、気に入ったらそのまま住めばいいし、嫌ならそれから上京したっていい。そんな選択肢を与えてやりたかったわけです。

 そこでぼくは現在、東京に「単身赴任」のようなかたちになっていますが、締め切りに合わせて月に二回くらいは秋田に帰り、東京にいる間も毎日電話をしています。最近の話題はやはり進路に関することが多いのですが、二人とも年ごろになり、面と向かっては言えないようなことも、電話なら気楽に話してくれます。離れてはいても、胸を開いて話し合える関係は大切にしたいですね。

 ぼくのデビュー当時の野球漫画『4丁目大リーグ』を読んだ息子が、「お父さん、面白かったよ」と言ってくれた時は素直にうれしかった。と同時に、作品数が少なくても、わが子に堂々と胸を張れるいいものをじっくりと描いてきてよかった、と思いました。

 子どもが親の期待に添えなかったとき、よく「子育てに失敗した」などと言いますが、それは親の欲ではないでしょうか。生まれてくるときはだれでも、「元気であれば」とだけ願っているのに、いつの間にか、欲が広がっていきます。ぼくはいまでも、ただ元気でいてくれさえすればいいと思い、子どもたちの好きにさせていますが、何かのときにはその責任がとれる親でいたいと思っています。

資料:月刊こども未来

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