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パパの子育て体験記

パパの子育て体験記

理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
文壇最強の子育てパパを自認 うんちのおむつ洗いも作家修行にプラス効果

鈴木 光司 (作家)

PROFILE(すずき こうじ)
1957年浜松市生まれ。慶應義塾大学仏文科卒。90年『楽園』でデビュー。ベストセラーの『リング』『らせん』は、映画やテレビドラマでもヒット。3部作完結編の『ループ』は、98年文芸部門のベストセラー第1位に輝いた。自らの子育て体験をもとに、エッセイ『家族の絆』などで子育て世代へ熱いエールを送り、「文壇最強の子育てパパ」を自認。98年内閣総理大臣主宰の「少子化を考える有識者会議」の構成員も務めた。近著に『バースデイ』がある。

鈴木 光司

  私は二人の娘の子育てにはずっと深くかかわってきました。それというのも、私は小説家になりたくて、大学卒業後も就職をせず、作家修行をしていました。妻は学校の教師をしていて意欲的に取り組んでいましたから、結婚して長女が生まれると、私は当たり前のように育児を引き受けることになりました。とはいっても、初めから「男も育児にかかわらなければ」といった高い意識をもっていたわけではありません。

 娘は生後四か月から保育園に預けましたが、妻は朝七時に出勤していましたから、そのあとの洗濯、食事の世話、保育園の送り迎えなどは私がしました。九時に娘を保育園に預けると、午後五時半頃までは自分の時間。このときに小説の構想を練ったり執筆をしたわけです。夕方、娘を連れて帰るとまた戦争です。買い物、食事の準備、風呂の掃除、そしておむつの洗濯をしながら娘を風呂に入れます。

 正直いって育児はたいへんです。とくにうんちのついたおむつを洗っているときなどは、「小説を書きたいのに、なんでこんなことをしなくてはいけないのか」とイライラしたこともあります。  しかし、子育てや毎日の家事から得たものは非常に大きく、どれ一つ無駄ではありませんでした。こうしたことに日常的にかかわることで、人間の見方が深まったのではないかと思います。それは小説にもプラスになっています。また家事や育児をしながら、書かなければという思いも募り、実際、長女が二歳くらいのときに『リング』を書き始めました。

 最近は仕事で留守にすることが多く、子育てのほとんどを妻にバトンタッチしましたが、いちばん手のかかるときに子どもたちにかかわっていましたから、いまでも「あ・うん」の呼吸です。中学生になると、女の子は父親と話さなくなるといいますが、わが家ではいろいろ話し合ったり遊んだりしています。

 大人たちは最近の子どもが何を考えているかわからないといいますが、なんらかのかたちで子育てにかかわっていると、子どもたちの気持ちを類推することができます。また、わかろうとする気持ちも自然に出てきます。

 ところで子育てには何らかのビジョンも必要だと思います。わが家の場合は、自分らしく生き生きとした人生を送るために、子どもたちに自信をつけさせることが大切だと考えました。ペーパーテストの成績を重視するより、チャレンジ精神を養うようにしたのです。ですから、私の取材旅行などにもどんどん連れ出しました。長女は小学生のときにノートを持って地元の人に取材し、夏休みの宿題を仕上げたこともあります。

 いま考えると、私の子育て体験はとてもラッキーで得難いものでした。世の中のお父さんにはもっと子育てに参加してほしいと思います。育児は自分自身の成長にも、仕事にも役立つ貴重な体験です。家庭のなかで母性と父性がバランスよく存在することは、子どもたちの未来にとっても大切なことなのです。

資料:月刊こども未来

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