|
著者は「日本赤ちゃん学会」を発足させたメンバーであり、乳幼児の発達行動学の第一人者です。胎児を含む赤ちゃんの発達や行動に関して、脳科学や医学分野での研究成果は、私たち一般の子育て家庭に多くの波紋を与えています。
日本国民の「三歳児神話」への信奉は諸外国に比べ独特で、依然根強く残っています。また、早期教育を奨励する企業や研究者が用いる科学的研究領域の成果は、胎児期からの能力開発を必須のものとして扱う傾向があります。これは、母親の育児不安を助長することになり、育児不安への過剰な警告は、子どもを持つことに対する意欲を失わせています。
著者が本書の冒頭に書いている「安心よりも不安を下さいという母親の増加」は、まさに科学的な根拠を求める結果であるといえます。
このような中、著者は医師として、学者として、科学の成果を育児に生かすことを奨励してきた者として、ある種の反省と自戒を込めて、「赤ちゃんをそのまま見ること」の大切さ、赤ちゃん自らが持つ能力を信じる大人側の姿勢こそが重要であると訴えています。
そして、何か「できること」が人間の「幸せ」に必ずしも直結しないことに気づくべきであると主張しています。とかく科学的なものに絶対的な信頼を置きがちな私たちに、自然体の「幸せな」育児を思い出させてくれる一冊です。
資料:月刊こども未来
|