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「子育てする人へ」

トップインタビュー「子育てする人へ」

子ども時代は大事な魔女期。あわてずさわがずよろよろさせて。 角野栄子
 
悪いことは嫌だ、という体を作る
父のお話や口調が生きる土壌を作った  少年犯罪も、それから誰とも話さないで引きこもる子どもも誰も信じられないんだと思う。本当に信じられる人が一人でもいたら、相談に行くと思うのね。 そう思うと、ひとりの大人として切ないですよね。何がいいことで、何が悪いかということも、小さいとき、自分が大切にされている、自分にも大切な人がいると思えるような愛し方をされていたらと思う。 それを言葉では言えなくても、体内的に知っていることが大切だと思うの。理屈で考えなくても、反射的にわかるということが大切。私は、小さいときに、そこが抜けていたのではないかと思う。 理屈じゃないけど、これは私は嫌だ、というような体の作り方っていうのかしら。これは極端な例だけれど、毎日毎日、きれいな靴下履かせてもらってたら汚い靴下履くのは嫌でしょう? だけど、汚い靴下ばっかりだったらなんとも思わないじゃない。好きなものと同じように、嫌いなものも土壌のなかに蓄えられていくんだと思う。
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それぞれの心の動くところへ
 私は「決め付ける」っていうことが、極端に嫌いなんだけど、現代っていうのは、決め付けるのね。決め付けるっていうことは、数を重視することとも言える。 「豊かな生活」なんていうこともどのくらい豊かになったかを、売上の数字や、何%の割合で考える。偏差値なんかもそうですよね。数ばっかりが優先される。 そしてそれは、皆がひとつの方向に向かって進むからで、それぞれ自分が心動かせることへ向かっていろんな方向に進めば、数は問題じゃなくなるのね。 今、実際に日本という国に住んでるわけだし、仕方がない部分もあってどうしたらいいかってことは私は教育者ではないから、簡単には申し上げられないんだけど、そういうなかで私は「ああしなさい、 こうしなさい」と言われない、読み手が自分で好きなところを選んで楽しめるような、豊かな風景を、児童文学の世界で書いていきたいと思っています。
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アリと仲良くする方法
 物語ってどうして面白いかっていうと、先が見えないからですよね。これから何が起きるかわからないときに、想像力って生まれるんだと思うんですよ。 絵本なんかも、ページを繰る一瞬っていうのは、無限大の想像力の瞬間なんですよね。たとえば、アリなんかじっと見てると、すごく不思議じゃない。 あ、何してるんだろう、どうして並んで歩いているんだろう、っていろいろ想像すると、アリと仲良くできると思うのね。 ひとりよがりって言ってしまえば、それまでだけど、アリにはアリの考え方があるのかもしれないけど(笑)、でも、ちょっと飛躍しちゃうけど、想像力がないと人の痛みもわからないんじゃないかと思うんですね。
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子どもは「魔女」
お母さん自身が好きな本を、子どもに読むのが大事  じっといろんなものを見ると、想像が浮かんでくるわけですよ。そして、実際の生態っていうのは、想像を超えているわけですよね。 そういうのをよく見ると、自分の好きなものも生まれてくると思う。だから、時間がないってせかせかしてると、もったいないですよね。 私は21世紀っていうのは「よく見る眼」が大事だと思う。それを待ってあげるという姿勢が、親、大人には必要だと思うのね。 よく子どもが塀の上やなんか、高いところへあがってよろよろ歩くの好きでしょ。実は、「魔女」ってそういう人なの。垣根の上にのぼる人。 そして垣根のあっち側とこっち側、見えない世界と見える世界、両方見ながら、心をわくわくさせているんです。そして、いい眼を持っている。 子どもはまさに、よろよろ歩きながら魔女になっているのね。そこで、危ないからって道の真中を、しかも早く目的地に着くように歩きなさいというのは、大人の論理。 子どもはよろよろといろんなこと想像して楽しいんだから、そういうときは、お母さんも一緒にちょっとよろよろ歩いてみるといいと思うわ(笑)。
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母親にも想像力が必要
 最近、働いてるお母さんすごく多いじゃない?それはすごくいいことだと思う。私自身も子どもが小さかったころ、保育園が整っていたら絶対に働いていたと思うんですね。 今は子どもの数も少ないし、保育園で子どもどうし遊ぶこともすごくいいと思う。 ただ、働いていて子どもと過ごす時間が少なくても、子どもとお母さんは熱い関係をもってほしい、「遊んであげなくちゃいけない」という義務じゃなくて、本当にあなたを愛しているのよという気持ちを表すことも、必要だと思う。ただ、ストレートに言うのではなく、想像力をもって工夫して、「チコタンチコタン」と簡単なものでもいいわけですからね。
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大人も本を読むことを楽しんで
 子どもが本を読まないっていうけれど、今大人が読んでいないでしょう。学校の先生も、受け持ちの学科以外の本は読まないとか。 私は学校の先生になるんだったら、国語が専門以外の先生も、児童文学を100冊や200冊くらい読んでほしいと思う。 そうしないと、子どもに本の楽しみを話してやることはできないんじゃないかしら。それで夢中になって読んで、子どもに何を読んでるの、って聞かれたら、 「すっごく面白いから、見せてあげないよーう」って隠しちゃう、そうやって子どもに「読みたい」っていう好奇心をあおるっていうのも工夫の1つじゃないかしら。 お母さんにも、もっと本を読んで、好きになってほしいですね。漫画だっていいのよ。好きなもの見つけて、自分で楽しんでほしい。 そして自分が喜んだら、それを自分の心のままに表現したらいいと思う。だから子どもに読みきかせをするときも、自分が楽しいと思うものを読むっていうのがいいと思います。それが一番、楽しさは伝わると思います。。
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子どもにやんちゃをさせる勇気
 私のすごく好きな本に、河合雅雄さんの『少年動物誌』というのがあるんです。河合さんが自分が少年のときに関わった動物との話なんですけど、彼は子どもの頃ずっと肺を患っているんですね。 そんな、命が危ないというようなときに、ものすごいやんちゃをするわけですよ。ちょっと熱が下がると、もう外に出て行って沼地に入って鯉をつかまえたり、切り傷だらけになったりして、また具合が悪くなると、天井を見て寝ている(笑)。 動物の命と、自分の命のぶつかりあいが、すごくきらきらしているのね。彼は、のちに京大霊長類研究所や、日本モンキーセンターの所長さんになるわけですけれど、でもこれは、河合さんの母さんががすごいと思いますね。 私にはとてもできない。その河合さんが、今小さい子からちょっと大きい子までを連れて毎年ボルネオに行くという活動をなさっているそうですけれど、母親はいろいろ心配するらしいけど、やっぱり行く前と後では、子どもたちが変わるというのね。 最初は「汚い、汚い」って言っていても、どんどん平気になって。今、親、大人はずっと効率を優先して、子どもたちの世界をこわしてきてしまったわけだから、演出してでもこういう心がときめくような機会を作らなければいけないんじゃないか、と思いますね。
おわり
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