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「子育てする人へ」

トップインタビュー「子育てする人へ」

「子育て」が楽しい時代、になるために
子どものためにも大人のためにも、新世紀は子育てに新しい物語が必要ではないでしょうか。各界の著名人に、それには何が必要かを伺います。

角野栄子さん写真 子ども時代は大事な魔女期。あわてずさわがずよろよろさせて。 角野栄子

 新米魔女キキがホウキに乗っていきいきと大活躍する宮崎駿映画の大人気作品「魔女の宅急便」。 子どもも大人も魅了されたこの作品の原作者、角野栄子さんに、「子ども時代」の大切さについてお話を伺いました。
角野栄子(かどの・えいこ)
1935年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社に勤務。退社して結婚、1960年ブラジルへ渡り、2年間滞在。 帰国後の1970年、サンパウロの少年をモデルにしたノンフィクション『ルイジンニョ少年』を出版し、子どもの本の世界へ。主な著書に『ズボン船長さんの話』(旺文社児童文学賞等)、『大どろぼうブラブラ氏』(サンケイ児童出版文化賞大賞)などのほか、宮崎駿アニメにもなった『魔女の宅急便』(野間児童文芸賞、小学館文学賞等)がある。 最新作『魔女の宅急便 その3』では、渋谷の女子高生をイメージしたもうひとりの魔女が登場する。2000年、紫綬褒章受賞。
角野栄子さんのホームページ http://home4.highway.ne.jp/kiki/ キキとジジの交換日記に作者が入り込んだり、大どろぼうが大好きな「じゃがいももち」の作り方など遊びがいっぱいの素敵なページです。
体のなかにある土壌を豊かに
愛犬のカヤちゃんと  私は、人には「土壌」っていうのが大事だとずっと思っているのね。たとえば、野菜を作るとき、肥料を入れたりするわけだけど、表面近くの土よりもっと下、長い年月をかけて、落ち葉やいろいろなものからできた、何層にもなっている土壌のほうが、おいしい作物を作るでしょ。 それと同じで、頭で理屈をこねなくても、体の芯でくっと反応できる、あっこれ面白いなと直感するってことが人にはあるんだと思うのね。 それは、小さいときに蓄えられるもの。子どもの頃に、わあ、これ面白い、不思議だな、好きだな、安心するな、そんなふうに思いながら土壌を作っていくのだと思う。 私自身、あとから与えられたことなんて、本当に少ない。だから、本当に小さいときというのは、大事だと思うのね。
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子どものころの「わくわく」
 私は、小さいとき、すごく暗い子どもだったの。4歳になったばかりのときに母が亡くなって、ちょっと情緒が不安定というか、痩せててがりがりで、太れないくらい神経質な子だった。 でも、その頃、「わくわくする」っていうのが、ものすごく私にとっては大切なことだったのね。だから自分で、自分が主人公のお話を考えてなんとか今の陰気な自分から飛び出していきたい、とそういう気持ちが強烈にあったの。 それは、お話に限らず、遊びでも何でもいいんだけど、なにかわくわくした新しいもので心を動かされると、自分もみんなといっしょにやれる、というような気持ちになれてそれがすごくその頃の私には大事だったわけ。 そのときの心の波長、たとえばこういうことが起きたらきっと私はときめくわ、とか私の小さいときも喜んだな、っていう感覚で作品を書いている。 それは、今の子どもたちにも通じてるって信じているの。
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父のお話で培われた想像力
 母を亡くしてから父と、姉と私と弟の暮らしが始まったわけですけど、父は、母親のいない子を、なんとか明るく過ごさせなくちゃいけない、と必死だったんでしょうね。 まだ小さい子どもたちに、自分が若いころ、貧しいなかでたまに観た、ハリウッドの映画だとか、宮本武蔵の話をしてくれました。 でもそれは、自分自身がものすごく楽しかったから話すわけで、教育的配慮では、まったくないんですね。私たちがわかったかどうかなんてことは、彼には問題じゃない(笑)。 でも、それがすごく楽しみでしたね。長い話だから、「また明日ね」と言ってインターバルが入る。そうすると、続きを想像するでしょう、それは自分の物語を作るってことですからね、子どもにとってはわくわくすることですよ。 今、読み聞かせのために「一晩で読めるようなお話」がいい、なんて言われますけれど、私はむしろ途中でやめてたりして、つづきのあるお話のほうがいいと思うくらい。 私の父は、人並みに仕事はあるしお酒は飲むし遊びにもいくし、っていうわけだから、続きを聞くのは3日後だったりして(笑)、でも、その間たっぷりつづきの物語を想像してましたね。
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江戸っ子の語感
 父は江戸っ子ですから、口調もしゃきっとしてるわけ。それに、節のついた面白い口癖がいっぱいあった。 たとえば、わきを通ると、私の鼻の頭に指をおいて「チコタンチコタン、プイプイチコタン」なんて言うわけですよ。 その言葉には何の意味もないんだけど、子どもからしたら「ああ、お父さん、私に気を配ってくれたんだな」ってちょっと安心しますよね。 今、お話を書く仕事をしながら、自分の語感、自分のなかでまわっている言葉というのはそのときに与えられたものだな、と思うし、それで今私は勝負というか、作品を書いているというような気がしますね。 これも、私の土壌の、大切なひとつです。
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ほめ上手だった父
 親っていうのはずいぶん欲張りで、自分の子どもに対して保守的になるのは私も経験しましたし、それは一種の動物的な本能だと思うけれど、私の父はほめるのが上手でしたね。 私、小学校1年のときの通信簿がすごく悪かったの。ひとつだけしか優がなくて、ほかは良とか可ばっかり。自分でも悪いと思いながら父に見せたら、父は、「ひとつ優があるんだから、たいしたもんだ」って言ったんですよ、それでものすごく安心してね。 今でも忘れません。これが「ひとつだけしかないな」って言われていたら、ずいぶん違っていたんじゃないかしら。
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