父親としての子育てを考えた場合、女性の社会進出が進んだとはいえ、やはり家族における「社会の窓」として、世の中のしくみを子どもたちに伝える役割があると思います。
私には十四歳と九歳の娘がいます。私は「社会の窓」として彼女たちに、「女の子なんだから、男の子以上に勉強しないと一人前に認められない。これから世の中が実力主義になってくれば、女性だから、という差別は少なくなってくるが、その分、実力がモノをいうようになる」といったことを言い聞かせています。「子どもに分かるのか」と思われがちですが、小学生以上になれば、大人が考えているより、子どもたちは社会のしくみをよく理解できるものです。
こんな話をすると、多くのお父さん方は「自分のような平凡な人間には、特別に伝えるようなことは何もない」と考えがちです。しかし、今の自分の仕事のこと、一生懸命になっていることを素直に話せばいいのです。
世間的にどんなに偉いとされている人よりも、子どもにとっては親が一番。例えば仕事の話なら、平凡に見えても、今の仕事においてはみなさん一人ひとりが立派な専門家なのです。仕事でなくても、日々、悪戦苦闘していること、楽しかったことなど、すなわち自分自身についてもっと自信をもって、子どもたちに語ってほしいですね。
それには、自分は世の中の役に立っていると、父親自身が自分を見つめ直すことから、子どもへの語りかけが始まる気がします。
私の娘への語りかけでは、最近、うれしいことがありました。私の持論の一つに、「子どもが親の財産に頼るのは最低。相続税を高くして、その分、子育て世代の税負担を軽くすべき」というのがあります。「そんな親の子が、親の財産をあてにしていては世間の笑いものになるだけ。だから一生懸命勉強しなさい」と、子どもによく話してきました。
これに対して、上の娘がアメリカの大富豪・カーネギーの自伝を読んで、「“子どもに財産を残すのは富豪の恥である”だって。お父さんと同じだね」と教えてくれました。子どもにとっては、親の財産をあてにしていた方が楽なのに、読んだ本の中から私のために一つの言葉を拾い出し、私の考えを応援してくれたわけです。
さて、子育てに関連して、いろいろな製品や施設(ハード)がそろい、肉体的には楽になったはずなのに、現代の女性が子どもを産みたくない理由は、どうやってしつけるか、あるいは教育を受けさせるか、といった心理的な、いわばソフトの面での不安が大きいのではないでしょうか。そんなソフト面でサポートするのも父親の子育てです。
この中のしつけに関しては、子どもたちの夢が社会に向かって開いている場合は、生活態度も崩れにくいものです。夢をあきらめてしまった時点で崩れがちです。ここで自身の社会経験をもとに、「あきらめてはいけない。世の中捨てたもんじゃない」と、一つの抑止力になることが父親の役割です。そのためには父親自身が時代の閉塞感に流されないこと。親が流されては、子どもはもっと流されてしまいます。(談)