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こども未来財団から

こども未来財団調査
「子育てに関する意識」

こども未来財団調査「子育てに関する意識」

●『子育てに関する意識調査』を読んで
 上智大学総合人間科学部 社会福祉学科教授 網野 武博

3.家族、親子、そして人間相互の
コミュニケーションの課題

 今日の晩婚化、未婚化、そして少子化の背景としては、あまり高い関心が注がれていないものの、しかし深い検討が求められているものとして、筆者は人間としてのコミュニケーション能力の問題と課題があると考えている一人です。価値の多様性や相対立する価値観がもたらす課題の多くは、夫婦間、親子間、そしてそれは家庭に限らず、大人と子ども間、子ども同士の間で生じがちな、コミュニケーションの不足や欠如に起因するものが多いように思います。今回の調査結果と考察は、そのことを示唆している内容が多くみられました。
 子どもとのコミュニケーションに関する男性の回答にみられる一つの特徴は、子どもの様子の把握の不十分さ、コミュニケーション方法の悩み、そして子どもとの会話の頻度の低さに典型的にみられるコミュニケーション不足の悩みです。この問題は、先に挙げた男女差とも結びついています。夫の子育てへの関与は、夫婦間、親子間のコミュニケーションの能力や有り様(ありよう)にも深くかかわっています。本調査では、夫の子育てへの関与の高さは、妻の子育てイメージだけでなく、夫自身の子育てイメージにも好影響を与えていることを示しています。そして、考察においては、子育て分担を非対称的ではなくできるだけ対称的なものとし、かつ互いに分担関係を納得し合うような夫婦間のパートナーシップを構築することが重要であると示唆しています。
 また、今回の調査結果からも見出される中高生層の友だちや仲間との遊びや交流、諸活動の低下は、現代の日本社会の特徴ともいえるものです。家庭、学校、地域、そして社会において、人と人との多様なかかわり、ぬくもりのある関係を持ちにくくなるほど、人間同士正面から向かい合う関係、また適切な異性との関係、家族・親子関係に支障が来(きた)されやすくなります。このようなかかわり経験を豊かに、相応に持つことの効果は、必然的に自らが大人となり、親となったときに現れやすくなります。
 その例として、本調査が結婚に対するイメージと、子育ての自信・不安・楽しさなどとの関連について分析している例を挙げることができるでしょう。つまり、現実の子育て期において、夫婦間のコミュニケーションの高さと、子育ての楽しさとが高い関連を持ち、また、中高生などの親予備軍では、結婚や子育てに対するよいイメージと、親とのコミュニケーション濃度の高さや自らの子育て疑似体験とが高い関連性を持っている、と指摘しています。さらに、子ども時代に近所の大人とのかかわりが多かった人の方が、また子どもとの接触経験が多かった人の方が、より多く周囲からの手助けを得ている現状が指摘されています。考察では、これを「開かれた子育ての再生産」というキーワードを用いて、分析しています。
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4.子ども、子育て家庭を重んじる社会
 筆者はさらに、親自身が未成熟であることが多くなったという認識の度合いが、子育て層、子どものいない層、中高年層のすべての成人層にとどまらず、中高生層にも高いことに、注目しました。このことは、上述の課題と深く関連しています。
 人間相互のコミュニケーションの能力や有り様(ありよう)は、ライフステージ、ライフサイクルを通した連鎖的な視点が必要です。近年の子育て問題は、過去における子どもたちの成長、発達過程における大人準備性、親準備性の形成と深くかかわっています。その基盤となるものがコミュニケーション経験です。子育てを家庭内のこととし、他人事・よそ事として軽視し、特に母親の役割であるとする価値観が主流である限り、少子化の問題と課題はさらに繰り延べられていくでしょう。
 私たちの社会に生まれ育つ子どもたちを、その子どもの育ちに最も重い負担と責任を負っている子育て家庭を、真に尊重し、子育てに心優しい社会を再生することを、すべての人々が認識し、それに則して行動することが、最も必要なことであると考えます。その基本が、人間相互のぬくもりのある関係の形成にあると思います。
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