(最終更新:08.10.28)

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(登録:08.10.28)
■■ 日本小児科学会主催第6回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム「子どものいのちの輝きを支えるために―重度障害をもった子どもの人権と尊厳をどのように守るか」の開催について

日本小児科学会倫理委員会

 日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムは、平成9年7月臓器移植法が成立後、小児への臓器移植の枠を広げることが、改訂の焦点とされており、検討されていることをきっかけに開始され、平成13年5月5日、「臓器移植はいかにあるべきか」のタイトルで第1回フォーラムを開催しました。その後、ほぼ毎年フォーラムを開催し、昨年7月には、小児の脳死臓器移植法の改正議論が進行している状況を踏まえて、新生児から小児までの重い病気のこども達が生きることの大切さを如何に社会に伝えるかを一般市民の皆様とともに考え、医療者として市民としてなすべきことを考えていくことを目的に第5回フォーラムを開催しました。
 こうした経緯を踏まえ、今回は近年の著しい医療技術の進歩により、従来救命不可能であった超低出生体重児のintact survival(後遺症なき生存)が可能になると同時に、超重症児のように人工呼吸器や様々な医療的ケアを必要としながら在宅や病院、療育施設で過ごす重度障害をもった子どもが増加しています。こうした中、重度の子どもたちの「いのちの輝き」をどのように支えるか、とくに自分で意思表示のできない子どもの人権と尊厳をどのように守るかを、医療者の現場の立場だけでなく、ご家族の立場、神学・倫理学・法学の立場、マスコミの立場から発言をしていただき多面的に討論したく思います。是非医療者だけでなく、多くの一般の方々、非医療者の方々が参加して下さり、子どものいのちの輝きについて、そのTotal Careについて、子どもの人権と尊厳を守る視点からより良い医療の選択と支援システムの構築を一緒に考えていただければ幸いです。多くの方々の参加をお待ちしています。
 開催についてご質問または問い合わせがある場合は、下記にご連絡下さい。
 連絡先(メールのみ対応):
 淀川キリスト教病院、小児科事務担当
 鍋谷まこと(a103111@ych.or.jp)、和田  浩(a198010@ych.or.jp)

日時:12月6日(土曜日)13時30分〜17時
会場:薬業年金会館
(大阪市中央区:地下鉄「谷町6丁目」駅 C階段4番出口直結)
*日本小児科学会専門医研修集会5単位

司会:
 船戸 正久(淀川キリスト教病院小児科)
 田中 英高(大阪医科大学小児科)

【発表】(各20分)13時30分〜15時

  1. 「子どものいのちの輝きと小児の在宅医療支援」
     前田 浩利(あおぞら診療所新松戸)
  2. 「重症障害児のいのちの輝きと尊厳ある医療の選択」
     山田美智子(前 神奈川県立こども医療センター重症心身障害児施設:現センター顧問)
  3. 「家族が願う子どもと家族のTotal care」
     田中千鶴子(昭和大学保健医療学部看護学科)
  4. 「英国における小児の在宅支援と緩和ケアチームの働き」
     多田羅竜平(大阪市立北市民病院小児科兼緩和医療科)

【休憩】15時〜15時10分

【コメント】(各10分)15時10分〜16時

  1. 「子どもの尊厳を支えるための提言」
     松本 信愛(聖トマス大学人間文化共生学部)
  2. 「生命倫理学から見た子どもの最善の利益とは?」
     掛江 直子(国立成育医療センター研究所)
  3. 「自分で意思表示ができない子どもの最善の利益を誰が代弁すべきか?」
     甲斐 克則(早稲田大学大学院法務研究科)
  4. 「医療の現場から思うこと」
     和田 和子(大阪大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター)
  5. 「『さよならのプリズム―終末期医療は今』の取材から見えたいのちの輝き」
     若林 久展(共同通信)

【総合討論】16時〜17時

【指定発言】
 谷澤 隆邦(兵庫医科大学小児科教授、日本小児科学会倫理委員会委員長)


第6回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムポスター(PDF)
(画像をクリックするとPDFが開きます。)



(登録:08.10.9)
■■ 2008年 日本小児科学会賞授賞式

 第111回日本小児科学会学術集会(日本医科大学 福永慶隆会頭)において、日本小児科学会賞を受賞された福山幸夫先生(東京女子医科大学)の授賞式が行われ、別所文雄会長から、賞状、副賞、メダルが手渡されました。
 授賞式の後「福山型先天性筋ジストロフィー―その発見から現代的位置づけまで―」と題する記念講演が行われました。

日本小児科学会賞を受賞された
福山幸夫先生(左)と別所文雄会長(右)

別所会長から賞状授与

日本小児科学会賞受賞記念講演

 



(登録:08.8.1)
■■ 予防接種に関する要望書(日本脳炎・百日咳・Hib・水痘)

平成20年7月24日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 梅田 珠美 殿

社団法人日本小児科学会
会長 横田 俊平

 最近日本小児科学会が得た情報によれば、ベロ細胞由来日本脳炎ワクチンの導入と実施が来年度早期に見込まれていること、b型インフルエンザ菌(H. influenzae:Hib)ワクチンの導入が近々に実現すること、厚生労働省予防接種検討会(加藤達夫座長)が近々開催されるということです。
 日本小児科学会はこれまでにも、予防接種に関する要望書を厚生労働省に提出し、重要事項に関して検討頂いております。その中には既に要望を受け入れて頂いている事項もあり、感謝いたします。一方、未だ実現に至っていない事項もあり、近々予防接種検討会が開かれるということを機会に、以下の事項について改めて要望いたします。また、これに関連して新たな提案を述べ、予防接種検討会において議論して頂くことを強く要望します。

  1. 日本脳炎
     日本脳炎ワクチンについては、国による定期接種勧奨中止の後、日本小児科学会としての見解、要望などをこれまでに提出してきております(直近は平成18年7月5日)。ベロ細胞由来の日本脳炎ワクチンによる日本脳炎ワクチンの定期接種が再開されることは、わが国における日本脳炎対策の必要性から強く期待していたものであり、改めて歓迎するものであります。しかし国による定期接種勧奨中止の決定は、事実上定期接種の中止であり、生産量の低下も相まって一部での強い希望者に対する接種が少数行われていたにすぎません。多くの定期接種対象者は、定期接種を受ける機会を失したままになっております。
     仮に来年4月に定期接種が再開されたとしても、予防接種法の規定上、その時点で定期接種年齢を超えた者は、1期、2期接種いずれも定期接種の対象とはならず、定期としての接種機会を失したままになります。したがって国による接種勧奨中止のために感受性者として残ることになり、国民に対する予防機会の提供という感染症に関する公衆衛生対策の観点から著しく外れることになります。
     これに対しては経過措置等で、本来は定期接種として行われていた者に対して定期接種としての接種機会を設置し、感染の可能性を減じておくことを強く要望します。

  2. 百日咳ワクチン
     百日咳につきましては、これまでの乳幼児疾患から次第に高年齢での発症となり、近年では大学生での集団発生など、社会的に問題にもなってきております。成人での慢性呼吸器疾患あるいは重症化することのみならず、新生児早期乳児などのハイリスク感受性者に対して感染源となり、院内感染、家族内感染など危惧されているところです。これについては、日本小児科学会は平成20年3月23日「大学生などにおける百日咳流行についての注意喚起」としてホームページに掲載すると共に全国医学部および看護系大学、専門学校等に手紙を送付し注意喚起を行い、関連学会などにも呼びかけているところです。
     米国では同様の現象を既に経験してきており、その対策として、11-12歳におけるジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン(Tdap)の接種を勧奨しています。DTPは、接種率の低い国では従来の乳幼児の感染症として、接種率の高い国では思春期および成人年齢での疾患としての新たな問題が、国際的に生じてきております。
     わが国においては乳幼児の接種率は良好で、疾患の発生もかなりコントロールされていると言えますが、思春期以降の新たな問題に対する解決策としてこれまでのDTII期接種に百日咳を加えること、さらに成人予防接種の考え方の導入などについて委員会で検討されることを強く要望します。

  3. Hibワクチン、水痘ワクチン
     Hibワクチンの早期承認について平成17年6月26日、水痘ワクチンの定期接種化について平成17年7月24日に、それぞれ要望書を提出しております。Hibについては、薬事法上の認可がおり、現在製品として臨床現場への登場が待たれているところですが、国際的には公衆衛生上重要なワクチンとして位置づけられており、多くの国で定期接種並みの導入が行われております。
     水痘ワクチンには、世界に先駆けてわが国において開発されたワクチンで、世界77ヶ国で採用され、米国、イタリア、フランス等では定期接種並みの扱いになっております。一方わが国では、これまでの予防接種検討会で定期接種としての導入を検討されてきておりますが、依然任意接種の扱いになっており、接種率は35%程度であり、わが国の水痘の疫学状況には全く変化が見られておりません。また最近の厚生科学研究(主任研究者・岡部信彦)においても、免疫異常を伴わない入院例、重症例が少なからずあることが報告されています。

  4. 定期接種の類型について
     現在の定期接種は1類疾病、2類疾病と分けられており、2類疾病は高齢者のインフルエンザのみなっております。この類型化を議論した時の予防接種検討会(神谷齊座長)においては、高齢者のインフルエンザと共に、水痘、ムンプス、Hibなどについては、1類より勧奨の程度を緩めた2類疾病として定期接種にすることが討議されておりますが、インフルエンザを除いては将来の問題として、残されそのままとなっております。
     日本脳炎につきましても、これまでの予防接種検討会(加藤達夫座長)、あるいは日本脳炎に関する専門家会議(岡部信彦座長)などで、結論は得られておりませんが2類相当疾患が妥当ではないかとの議論も行われております。
     世界では感染症の予防について新たなワクチンの開発導入が進んできております。わが国においてHibワクチンの導入、水痘ワクチン等の接種の考え方に関する見直しが必要と考えられる中、これら類型化および予防接種費用の負担などの問題点についても、この機会に議論を尽くされることを強く要望します。



(登録:08.7.14)
■■ 日本小児科学会子どもの生活環境改善員会の提言



(登録:08.6.4)
■■ 第3回思春期医学臨床講習会

※下記をクリックすると拡大された画像をご覧いただけます。

会員ページからお申し込みください。



(登録:08.5.22)
■■ 要望書「先天性代謝異常等検査事業の廃止に反対します」

大阪府知事 橋下 徹 殿

日本小児科学会
社団法人日本小児保健協会
社団法人日本小児科医会
日本マス・スクリーニング学会

 科学的に確立したすべての出生児を対象としたスクリーニングと治療法により、確実に予防できる先天性代謝異常症およびクレチン症等の検査事業予算を全廃することは、少子化の進展したわが国において出生してくる子どもの尊い生命が健やかに育まれることや府民の生命の尊厳と生活を著しく侵すものであり、断固反対します。



(登録:08.3.31)
■■ わが国の社会への「保育環境の整備に関する」提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会
提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会

 育児は本来親が行うのが基本であり、それを社会が支えるしくみが必要です。しかしながら、核家族化の進行、男女共同参画の推進、子育てに対する親の意識の変化などにより、低年齢児の保育施設での保育が今強く求められています。一方、核家族化した現在の家庭では他者との関わりの機会が減少しており、保育施設では現代の家庭環境では体験できない他者との関わりの機会が増え、子どもが自律性と社会性を学ぶ場になりうることも事実です。さらに、保育施設は親にとっても職場以外の人間関係を構築できる機会となりえます。しかし、このような社会状況の中で重要なことはできるだけ子どもと親が家庭にて接する時間を増やすことです。この目的を達成するために、子育てを担う保護者への、社会・国からの積極的な支援が必要です。

  1. 本来保育は保護者の責任であり楽しみでもあります。また、子育てを通じて、子育てをする側が人間的に成熟することも重要な事実です。但し、子育てをする保護者を社会や国がこれまで以上に積極的に支援することが必要です。
  2. 乳幼児期に温かい人間関係を構築することがその後の人生に大きな影響を与えます。幼い子どもたちの育児はその意味で大変に重要な仕事であることを保護者だけでなく社会全体が認識しなくてはなりません。
  3. 様々な家族構成の事情や社会へのニーズに対応するため、保育施設には以下の4〜10に述べる事項が望まれるべきです。しかしながら子育て、保育の原点に立つとき、子育てを保護者が延長保育、夜間保育、病児保育、病後児保育を利用しなくても済む労働環境の整備や経済的支援について社会をあげて改善することが必要です。
  4. 保育施設には小児保健に関する豊富な経験と知識を持つ看護師を導入することが望まれます。さらに、0歳児が入園する保育施設の園医には子どもの病気と保健に関する知識と経験を有する小児科医が就任することが望まれます。
  5. 保育施設には保育についての豊かな知識と経験を持つ保育士をこれまで以上に配備することが必要です。
  6. 保育施設には6か月までの乳児を他の児から分けて養育することのできる、静かな環境の部屋を確保することが必要です。とりわけ乳児には日中の睡眠時間を十分に確保できる環境整備が不可欠です。
  7. 子どもが栄養学的にも適切な、健康的で愛情にあふれた食事をとること、和やかで楽しい雰囲気のもとで保育者と共に食事をすること、子どもが食事のマナーを修得・実践できる環境を整備することなど、食育の観点から見た総合的な対応が重要です。
  8. 子どもが病気の時は、保護者やそれに代わる親族が病気の子どもをみるのが原則です。しかしながら、病児保育・病後児保育の社会的必要性は今後ますます高くなることが予想され、それらの整備が必要とされます。一方、子どもが病気になった時に保護者が仕事を休んでも、保護者の職場での立場が弱くなったり損になったりしないように、子育てをおこなう保護者への支援制度が整備されていることも必要です。また、家庭内での育児の負担が母親だけに重くならないよう、夫や親族の積極的な協力も必要です。
  9. 今後、長時間保育、休日保育、一時保育などの整備が予定されています。このような保育システムの充実は現代の社会にとって意義がありますが、それを利用する保護者のマナーの育成が同時に必要です。
  10. 保育時間の長時間化は子どもの成育にとって必ずしも望ましくない面があります。特に、乳幼児にとって温かな母子関係が構築されることがその後の人格形成に不可欠なためです。従って、母親の代わりとして、保育施設では特定の保育士と乳幼児との間の愛情にあふれる人間関係を作るため保育施設では担当制を取ることが望ましいと考えます。また、保育を利用する側も、保育の長時間化には問題がある点を認識すべきです。
  11. 保育所の機能を地域に浸透させ、家庭で子育てをしている保護者をも支援する施設にすることも重要です。
  12. 障害児保育は障害児のみならず健常児の成長や発達のために重要な社会資源です。社会全体でこれを支え、さらに広めるためにも人的資源の充実が必要です。



(登録:08.3.31)
■■ わが国の社会への「子どもの性の問題に関する」提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会
提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会

 子どもたちが大人になってから、理想のパートナーを見つけて、産みたくなったときに安全に子どもを産み、幸せに子育てができることが理想であることは言うまでもありません。しかし、現実には、若年妊娠にともなう若年出産や人工妊娠中絶、性感染症による健康被害などの問題が起きています。また、性的虐待や性の商品化などの問題も子どもたちを巻き込んでいます。これはわが国だけの問題ではなく、世界の多くの国々に共通した問題です。私たちには、子どもたちの「健全な性」を育成し、子どもたちの「性の健康」を守り、子どもたちが「将来に安全で幸せな出産・育児」ができるような支援を行うことが求められています。

  1. 自分、パートナー、次の世代の健康を守る責任を持つことが困難な思春期の子どもたちの性交渉は基本的に勧められるべきではありません。しかし、実際には、知識や相談機関が少ないために妊娠したり、性感染症によって健康を損なう子どもたちがいます。また、性的な虐待を受けている子どもたちや金銭などで性を買われている子どもたちもいます。
  2. この様な現状を考えるとき、子どもたちを守るために社会自体もその在り方や子どもたちを大切にするための方策を考えなくてはならない時期に来ています。
  3. 子どもたちの性を守るためには、子どもたちを取り巻く大人が未来を支える子どもたちの権利が守られるように努めてゆくことが基本です。子どもたちにとって将来の目標となるような大人たちを増やしてゆく必要があります。
  4. 例えば性を商品化することを謳っている一部のマスメディア、規範によらないインターネットでの情報氾濫、増加する出会い系サイトなどについては、子どもたちを守るためにも何らかの対策が必要と考えられます。言論は本来自由であるべきですが、自由にはそれを守ってゆくための責任が伴います。
  5. 現在は真偽とりまぜて様々な性の情報があふれています。子どもたちには、命の大切さを考えるという観点からの生命の誕生にいたる知識、性交渉を行った場合に遭遇しうる健康被害としての妊娠や性感染症のリスクについての正確な知識を伝えるための教育が必要です。教育によって防ぎうる「不幸な事態」は決して少なくないと考えます。



(登録:08.3.27)
■■ 大学生などにおける百日咳流行についての注意喚起

平成20年3月23日
社団法人日本小児科学会

 百日咳は乳幼児、小児に好発する感染症ですが、数年来、成人の百日咳が感染症専門家の間で注目されております。一般にワクチンによる感染症の予防効果は生ワクチンではあっても数年〜10数年で減衰することがあり、不活化ワクチンの場合にはさらに短期間であることが多いため、追加接種が行われることがあります。百日咳ワクチン(P)が含まれる三種混合ワクチン(DPT:不活化ワクチン)は、我が国では乳児期に3回(1期)、1年後に追加接種1回を行いますが、11〜12歳の2期接種は、百日咳による直接の危険時期は過ぎたと考えられるところから、2種混合ワクチン(DT)の追加接種が行われています。一部海外では成人層での百日咳、およびそこから乳幼児への感染拡大への警戒のため、我が国の2期(DT)に相当する予防接種をDPT三種混合ワクチンで行っている国もありますが、我が国では今のところその予定はありません。
 2007年に大学生を中心に成人、年長児に麻疹が流行したことは周知の通りですが、四国の2大学では百日咳の流行的多発がみられました。いずれも医学部の学生から拡大したことが考えられ、医学部および付属病院職員にも感染が拡大しました。
 早期検知、治療、予防的投薬および積極的疫学調査などの適切な対応がとられ、2次感染による患者さんの発症者は無く、幸い新生児病棟等への拡大もありませんでしたが、見過ごした場合には、重症者、あるいは最悪では新生児乳児などの死亡者も含む重大な院内感染に進展した可能性は十分にあったと推察されます。このときの疫学調査では、学生に発症する以前より地域で百日咳に感染したと考えられる患者さん、職員も少なからず観察されており、今後も麻疹と同様に大学生を中心に百日咳が多発する可能性は四国のみならず全国同様であることが危惧されます。
 三種混合ワクチン既接種者、あるいは成人の百日咳は、小児百日咳に関して成書に書かれてあるような典型的な臨床症状(レプリーゼあるいはウープ)、検査所見(白血球増加、リンパ球増加)を呈しません。2週間以上続く長引く咳に加えて、突然の咳き込み、咳き込みによる嘔吐など、嘔気、嘔吐を伴うような頑固な咳嗽が遷延することが多いようですが、軽症例も少なくありません。鼻咽腔からの細菌培養は検出率が低く、血清診断は、感染と維持された抗体との鑑別が必ずしも明確ではありません。PCR、LAMP法などによる核酸検出法が利用されることがありますが、健康保険の適応になっておらず、検査可能な施設は限られています。また、核酸検出法は検出感度が高すぎて、必ずしもその診断的意義は確定しておりません。この様な理由で、症状が必ずしも典型的でない成人百日咳の診断は非常に困難で、専門医でも見過ごすことがあるほどです。
 しかし、軽症例であっても感染源となり、医学生、看護学生、その他の教育実習生などが百日咳に罹患すると、実習先の医療機関、施設、学校などで重大な問題が生じることが予想されます。そこで、日本小児科学会は成人、特に大学生における百日咳の存在と学生を介した院内感染、医療機関・学校など実習先への感染拡大を最小限に抑制するために、感冒にしてはしつこいと感じられる2週間以上続く頑固な咳嗽を認める学生、教職員が観察された際には、百日咳を念頭においた対応が必要であることを大学関係者にお知らせします。ご配慮のほど、よろしくお願い申し上げます。

 付記:なお、100%の診断率ではないものの、一般的には血清診断として山口株(流行株)に対する凝集素価の上昇(単一血清でかなりの上昇、あるいはペア血清で4倍以上の上昇)を確認することなども重要です。確定診断前に診断的治療が必要となる場合もあります。
 また国立感染症研究所によってLAMP法を用いた遺伝子キットが地方衛生研究所百日咳レファレンスセンター(秋田県健康環境センター、東京都健康安全研究センター、大阪府立公衆衛生研究所、三重県科学技術振興センター、愛知県立衛生研究所、福岡県保健環境研究所等)に配布され、検査体制の強化/拡充が図られているところです。すべての検体検査に応じられる段階ではありませんが、病原診断の相談先となります。(病原微生物検出情報―IASR― 2008年3月号 特集:百日咳 http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html



(登録:08.1.31)
■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解(3)

平成20年1月27日
社団法人日本小児科学会

 日本小児科学会はインフルエンザにおけるタミフルの使用に関して平成17年11月30日および平成18年3月25日に予防接種・感染対策委員会にて討議した結果の見解を表明している。
 その後厚生労働科学研究によって「インフルエンザに伴なう随伴症状の発現状況に関する調査研究班(主任研究者・横田俊平教授)」が構成されたことにより、さらなる見解についてはそれらの研究成果を見守っていたところであるが、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会(いわゆルタミフル調査会)が平成19年12月25日に開催され開催され、横田班を受けたかたちの廣田班による分析を含め、基礎、臨床ワーキンググループ(WG)におけるそれまでの調査成績などが報告された
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html)ので、ここにその概要を紹介し、日本小児科学会としての見解を述べる。

 調査会は、検討結果基礎WG及び臨床WGから非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査等の結果について報告を受け、現時点において、直ちにタミフルの服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆するような結果は得られていないが、特に、疫学調査及び臨床試験については、十分かつ慎重な検討や分析を進め、可及的速やかに臨床WG及び当調査会に報告することが適当である、としている。
 非臨床試験では、バインディング・アッセイの結果、臨床用量投与時に推定されるタミフルの未変化体及び活性代謝物の脳中濃度では多くの中枢性の受容体やイオンチャネル系への作用を持たないとされたこと等、臨床試験では、睡眠検査室試験の中間解析によるとタミフルについて睡眠異常を起こさないこと、心電図検査において著明な変化が認められないことなどが確認されたこと等が報告された。また疫学調査では、インフルエンザの経過中、重症異常行動がみられた割合は、タミフル服用群で60%と若干高いものの、非服用群での発生は38%にみられており(2%は不明)、いずれも10歳前後の男児に多かったと報告された。

 調査会は、引き続き基礎WG及び臨床WGにおいて、現在実施中又は解析中の非臨床試験、臨床試験及び疫学調査等の結果を含めた更なる調査検討を進め、できるだけ早期に最終的な結論の取りまとめを行うこととする、とし、これまでにタミフルについて現在講じられている以下の措置(注)は、現在も妥当であり、引き続き医療関係者、患者・家族等に対し注意喚起を図ることが適当である、としている。

(注)平成19年3月20日の緊急安全性情報(厚生労働省):10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

 日本小児科学会は、事実関係はまだ明確になってはいないものの慎重を期して一時的に使用を控えるとの厚生労働省の判断を受け入れ、「現在流行中のインフルエンザの10歳代患者に対するタミフルの使用は、ハイリスク群などへの治療を除き原則として当面差し控える。」としたい。
 また、調査会および異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)の調査では、抗インフルエンザ薬を使用していないインフルエンザ患者にも異常行動がみられることが改めて確認されており、インフルエンザ罹患時には回復まで十分経過観察する必要性を以下のように注意喚起するものである。

*インフルエンザにともなって異常行動がでることについてはこれまでも指摘されており、今回の研究班成績(岡部班)でもそれが改めて示されており、タミフル使用制限によって異常行動がまったくなくなるとは考えられない。したがってタミフルなどの服用の有無にかかわらず、特に小児や未成年の(ことに10歳を中心とした前後5歳くらいの男児)インフルエンザについては、症状が出てから2日間程度は、言動、行動等に注意し、その経過をよく見るよう保護者に説明すべきである。

 インフルエンザとタミフル及びリレンザ等の使用、そして異常行動との因果関係については、さらなる科学的な調査研究の継続が必要であり、日本小児科学会は引き続き本事例の科学的な解明に積極的に協力する方針であり、会員ならびに関係機関のご協力をお願いする次第である。

追記:厚生労働科学研究「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)では、重症異常行動については全医師に、軽症異常行動についてはインフルエンザ定点の医師に、情報を提供してもらいことを呼びかけている(情報提供先:国立感染症研究所感症情報センター http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/search.html)ので、学会員は是非ご協力頂きたい。

以上

参考(07.03.27登録に追加):

  • 日本小児科学会HP
    学会からの提言主張(登録:05.11.30, 登録:07.03.27)日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
  • 第39回日本小児感染症学会学術集会抄録 P.112-114 演題 B-7〜B.12
  • 厚生労働省ホームページ 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 平成19年12月25日開催 資料等
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html
  • 同上 検討結果について
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-8.html
    横田俊平他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第1報 薬剤使用および臨床症状発現の臨床的検討 日児誌 111(12): 1545-1558, 2007
    藤田利治他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第2報 薬剤使用と臨床症状発現との関連に付いての統計解析 日児誌111(12): 1559-1567, 2007



(登録:07.12.28)
■■ 宮崎大学の採血後に死亡した事案における損害賠償裁判について

日本小児科学会は、この宮崎地方裁判所の判決には現在の初期研修体制に支障を来す問題が含まれていると考え、この裁判の行方を注目しています。



(登録:07.12.18)
■■ 小児科医は子ども達が成人するまで見守ります

日本小児科学会では、小児科が診療する対象年齢を、現在の「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げること、そして、その運動を全国的に展開することを、平成18年4月に決定しました。これまで小児科に通院していた15〜20歳の方はもちろん、これまで小児科に通院していなかった15〜20歳の方も、どうぞ、気軽に小児科医に御相談下さい。小児科医は、積極的に診察して参ります。


(画像をクリックするとサイズの大きなサイズで見ることができます)



(登録:07.11.21)
■■ 超重症心身障害児の医療的ケアの現状と問題点―全国8府県のアンケート調査―

日本小児科学会倫理委員会



(登録:07.10.31)
■■ 第1回「子どもの食育を考えるフォーラム」―子どもの食は大丈夫?―講演内容の掲載について

 日本小児科学会栄養委員会では、小児医療・保健従事者がこれらの政策決定や取り組みに積極的に参加し提言することは、真に子どもの栄養・食、ひいては子どもの健全な成長を推進するのに不可欠であると考え、「子どもの食育を考えるフォーラム」を企画し、平成19年1月13日に東京都千代田区砂防会館において開催、多くの方々にご参加いただきました。食育についてより多くの方々に感心を持っていただきたく当日の講演内容を掲載させていただきます。

日本小児科学会栄養委員会



(登録:07.10.30)
■■ 小児集中治療部設置のための指針―2007年3月―



(登録:07.10.12)
(最終更新:07.10.17)
■■ 日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会共催
第2回子どもの食育を考えるフォーラム〜子どもの食を守るのはだれ?〜開催について

日本小児科学会栄養委員会

 本フォーラムは、“子どもの食・栄養”に関して、社会の関心が非常に高まっている中、子どもの食育の一層の推進に向けた取り組みの一つとして企画し、平成19年1月13日に第1回のフォーラムを開催し、多くの方々に参加いただきました。
 これを受けて今後継続的にフォーラムを開催していくこととなり、今回は日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会の共催とし、第2回フォーラムを開催することといたしました。
 多くの方々のご参加をお待ちしております。

日時:平成20年1月26日(土曜日)13時30分〜17時
会場:品川 The Grand Hall(港区港南2-16-4 品川駅港南口下車 徒歩3分)
参加費:無料(事前登録等不要)
後援:厚生労働省・文部科学省・日本医師会・日本栄養士会・日本小児栄養消化器肝臓学会・日本臨床栄養学会・日本臨床栄養協会・日本学校保健会・日本学校保健学会・日本栄養改善学会・日本母乳哺育学会・日本保育園保健学会
無料託児室あり:平成20年1月18日(金曜日)までに(株)アルファ・コーポレーション0120-086-720
担当:小滝宛事前に連絡ください

*日本小児科学会専門医・認定医研修5単位

プログラム

13:30〜開会の挨拶
 日本小児保健協会会長・日本小児科医会会長

  1. 授乳・離乳の支援ガイドラインについて(13:40〜)
    座長:
     清水 俊明(順天堂大学医学部小児科教授)
     玉井  浩(大阪医科大学小児科教授)
    (1)小児科医からみたガイドライン
     順天堂大学プロバイオティクス特任教授 山城雄一郎
    (2)授乳・離乳の支援ガイドラインについて
     厚生労働省母子保健課栄養専門官 清野富久江
    (3)ガイドライン使用の実際
     日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長 堤 ちはる
  2. 食育指導の実践(14:50〜)
    座長:
     南里清一郎(慶應義塾大学保健管理センター教授)
     位田  忍(大阪府立母子保健総合医療センター)
    (1)保育所での実践
     京都府城陽市清仁保育園栄養士 池本 文子
    (2)小学校での実践
     杉並区立三谷小学校 学校栄養職員 江口 敏幸
    (3)養護教諭が食育にどうかかわるか?
     足立区立第五中学校養護教諭:西尾ひとみ
  3. 肥満小児への食生活指導の実際(16:10〜)
    座長:
     大関 武彦(浜松医科大学小児科教授)
     神川  晃(神川小児科クリニック)
    (1)肥満小児への対応
     帝京大学小児科教授 児玉 浩子
    (2)子どもを肥満にしないために
     国立保健医療科学院 加藤 則子
    閉会の挨拶
     日本小児科学会会長



(登録:07.09.21)
■■ 産科医療補償制度に関する意見書

平成19年8月3日

財団法人日本医療機能評価機構
理事長 坪井 栄孝 殿

産科医療補償制度運営組織準備委員会
委員長 近藤 純五郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 現在、貴委員会・機構に於いて、精力的に検討がなされている「産科医療補償制度」につきましては、各種報道や日本医療機能評価機構のホームページから伺ってきました。これは、脳性麻痺で種々のハンディーを背負われている子ども達や家族の経済的救済になるだけでなく、無用な訴訟を減らす効果も期待出来、社会的に大変有意義な事業になることと期待しております。
 一方、想定されている補償対象から早産・低出生体重児を除外するという点に関しましては、日本小児科学会といたしまして、次の理由により、周産期医療および新生児医療への影響を無視しがたいとの観点から、深い憂慮の念を表明せざるをえません。

一.どの程度の早産・低出生体重児をもって補償の対象外とするのかという線引きに合理的説明を与える、あるいは納得を得ることは困難です。
一.早産・低出生体重児の分娩等、ハイリスク妊産婦・新生児を主として取り扱っている全国の周産期医療施設の産科医師や小児科(新生児科)医師にとっては、むしろ訴訟の増加の恐れが高まります。
一.脳性麻痺児の平等な患者救済に繋がらないのみならず、不平等を助長することになります。

 無過失であって周産期に起因する脳性麻痺は、早産・低出生体重児と正期産児でほぼ同数程度発生しており、等しく無過失補償の対象とするべきです。無過失による低出生体重児や早産児の脳性麻痺を補償対象に加えたとしても補償対象は倍増する程度です。日本小児科学会としては、一定の出生体重や在胎期間を満たさない場合を一律に補償対象から除外するのではなく、むしろ脳性麻痺の重症度によって補償対象を制限すること等の方が、社会的にみても公平な救済となり、患者・家族の理解も得やすく、無用な周産期医療訴訟を抑制する効果も期待出来ると考えております。
 ハイリスク妊娠・分娩の医療に日夜献身的に働いてきた医療関係者の努力を裏切ることのないよう、十分のご配慮をいただきたく、よろしくご検討の程をお願い申し上げます。



(登録:07.08.24)
■■ DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

 「DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書」を厚生労働省に提出いたしました。



(登録:07.08.24)
■■ 第9回国際川崎病シンポジウム

 第9回国際川崎病シンポジウムが2008年4月10日〜12日台北で行われます.
 下記サイトをご参照ください.



(登録:07.07.04)


■■ 2007年 日本小児科学会賞授賞式

 第110回日本小児科学会学術集会(京都府立医科大学 杉本 徹会頭)において、日本小児科学会賞を受賞された藤原哲郎先生(岩手医科大学名誉教授)の授賞式が行われ、別所文雄会長から、賞状、副賞、メダルが手渡されました。
 授賞式の後「新生児呼吸窮迫症候群(RDS)に対する人工サーファクタント補充療法」と題する記念講演が行われました。

別所会長から賞状を渡される

記念講演する藤原哲郎先生


(登録:07.06.05)
■■ 麻疹対策に関する見解と要望

日本小児科学会予防接種感染対策委員会

 平成19年5月末現在、関東地方を中心に小児科年齢を若干超えた年齢層での麻疹の流行により、休講(校)、学校行事の中止、順延などが続いております。
  日本小児科学会では、平成18年7月5日「麻疹サーベイランス強化(全数把握)に関する要望」を、厚生労働省に提出しております。
  そこには、
  「平成18年4月1日より法改正により麻疹、風疹の定期予防接種として、MRワクチンによる2回接種法の導入を行い、追って政令附則第2条の削除を行ったなどは、我が国における麻疹及び風疹対策の強化として大いに歓迎すべきことであることは、これまでにも表明してきたところです。
  しかしこれで一気に疾患の排除(elimination)にまですすむわけではなく、残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生、そしてこれらによる感染の循環が当面続くことは、これまでにも海外において経験されているところです。したがってわが国においてはその対応策としてまずサーベイランスを強化し、発生状況を正しく把握し、適切に速やかに感染拡大を予防するための対策をとることが重要であると思われます。」
  と明記してあり、まさに現在の若者の間での麻疹の流行状況は「残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生」であります。ここで今後の対策強化を行わないと「感染の循環が当面続く」ことになり、麻疹による犠牲者の発生、社会的混乱が数年ごとに繰り返され、さらには我が国も加盟国として属するWHO西太平洋地域(WPRO)による2012年までの麻疹排除(elimination)に、わが国は遠く離れることになってしまいます。

 これからとるべき対策として

  1. 麻疹に対する正確な状況把握と対応策を検討し、わが国における麻疹排除の戦略を策定するための公的な麻疹対策委員会を厚生労働省内に速やかに設立する。
  2. 麻疹サーベイランスについて、これまでの定点報告から全数報告性に切り替え、対策に必要な正確な情報を速やかに把握する
  3. 残された感受性者、すなわち定期接種該当年齢から外れるワクチン未接種者未罹患者、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(primary、およびsecondary vaccine failure)における集団発生の予防を行なう。具体的には、定期接種麻疹第二期の徹底とともに小学校、中学校、高等学校、大学など入学時等において学校当局あるいは教育委員会、文部科学省などの理解と協力を得て、麻疹感受性者の把握と該当者への麻疹ワクチン接種の積極的な勧奨を行うシステムを国として構築する。
  4. 定期第1期接種に関しては、さらなる高い接種率(95%以上)を目標とする。
  5. このために必要なワクチンの確保を行なう
  6. 麻疹対策と風疹対策は共通であり、また風疹感受性者に対する対策も合わせて行なうことによって先天性風疹症候群対策も行なえるところから、この時に使用するワクチンは原則的にはMRワクチンとする。

ことなどが早急に行われることを、日本小児科学会として強く要望します。

 なおわが国においてはMRワクチンあるいは麻疹単抗原ワクチンは、国内における通常の定期接種を十分賄うことを目的に生産され、また検査も個別あるいは小集団での診断ないしスクリーニングを想定して検査システムの構築が行なわれているところから、現状のような流行下において緊急ワクチン接種及び緊急スクリーニング検査に支障を来しつつあります。
  ワクチン接種にあたっては出来るだけ接種対象者を絞りワクチン接種量全体を抑制するためにはスクリーニングは有効ですが、接種そのものに抗体測定は不要で、抗体保有者へのワクチン接種は医学的には問題ありません。
  現状のように一時的に限られた量のワクチンを接種する場合には、最優先されるべきは、麻疹ウイルス感染によって重篤化することが容易に想定される未接種未罹患者、および第1期定期接種対象者(1歳代)であると考えられます。1回ワクチン接種の経験があるsecondary vaccine failureの可能性のある者については、感染発症した場合には感染源にはなり得るもののその多くは軽症に終わるので、ワクチンが再び市場に多く出回るようになってから対象にすることも考慮すべき段階であるかと思われます。

以上


 

(登録:07.03.27)
■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
(平成19年3月25日)

平成19年3月25日
社団法人日本小児科学会

 日本小児科学会はインフルエンザにおけるタミフルの使用に関して平成17年11月30日に予防接種・感染対策委員会にて討議した結果の見解を表明している。
 その後厚生労働科学研究によって「インフルエンザに伴なう随伴症状の発現状況に関する調査研究班(主任研究者・横田俊平教授)」が構成されたことにより、さらなる見解についてはそれらの研究成果を待っているところである。また厚生労働省に対しては同見解で「我が国において十分な市販後調査が継続され、その結果が国内においても適切に公表されることを望むものである。」と述べている。

 最近のインフルエンザ及びタミフルに関連した可能性があるとされる転落死を伴う異常行動の事例報告から、厚生労働省は医療関係者への注意喚起(平成19年2月28日)に続いて同年3月20日10歳代のインフルエンザ患者に対するタミフルの使用を差し控えるよう緊急安全情報を発出した。

 日本小児科学会はこれまで「一般診療におけるタミフルの使用については、従来通り投与の適応や症状の経過観察等への注意が必要であるが、現時点ではその使用に対して改めて注意勧告などを行う状況ではないと考える。」としてきたが、事実関係は明らかになってはいないものの慎重を期して一時的に使用を控えるとの厚生労働省の判断を受け入れ、「現在流行中のインフルエンザの10歳代患者に対するタミフルの使用は、ハイリスク群などへの治療を除き原則として当面差し控える。」としたい。
 ただし、インフルエンザとタミフルの使用、そして異常行動との因果関係については、さらなる科学的な調査研究が必要であり、率先して解明を行う環境を早急に整え、調査研究を強く進めることを国に求めるものである。
 日本小児科学会は本事例の科学的な解明に積極的に協力することを改めて表明する。

 インフルエンザにともなって異常行動がでることについてはこれまでも指摘されており、タミフル使用制限によっても異常言動が全くなくなるわけではないと言える。したがってタミフルなどの服用の有無にかかわらず、特に小児や未成年のインフルエンザについては、症状が出てから二日間程度は、言動、行動等に注意し、その経過をよく見るよう患者本人あるいは保護者に説明すべきである。

以上

参考:

  • 日本小児科学会HP
    学会からの提言主張(登録:05.11.30)日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
  • 医薬品・医療用具等「緊急安全性情報」医薬品医療機器総合機構
    http://www.info.pmda.go.jp/kinkyu_anzen/kinkyu_index
  • 日本小児科学会第110回学術集会抄録 p1-071-P1-074
  • 厚生労働科学研究費補助金「ワクチンの安全性向上のための品質確保の方策に関する研究」平成18年度分担研究報告(資料) 分担研究者・横田俊平 平成19年3月
  • 五島典子他:インフルエンザ罹患時の異常言動に関する臨床的検討 小児感染免疫 18(4): 371-376, 2006.
  • 浜 六郎:リン酸オセルタミビルによる突然死、異常言動死:その因果関係の考察(抄録) 小児感染免疫 18(1): 56-57, 2006.
  • 原 啓太他:インフルエンザの経過中に異常言動・行動を呈した症例の検討 日本小児科学会雑誌 111(1): 38-44, 2007.


 

(登録:07.01.10)
■■ ホームを含む駅構内全面禁煙化についての要望書の提出とその回答


 

(登録:06.10.10)


■■ 「わが国の新しい救急蘇生ガイドライン」の掲載お知らせ

財団法人日本救急医療財団ホームページに「わが国の新しい救急蘇生ガイドライン」が掲載されております.
リンク先を以下に掲載いたします.

http://www.qqzaidan.jp/qqsosei/index.htm


(登録:06.08.11)


■■ Pediatrics International編集委員会からのお知らせ

オンライン投稿料の設定について

Pediatrics Internationl編集委員会
編集委員長 柳川 幸重

 2004年からインターネット経由のオンライン投稿を開始し、おかげさまで投稿数は約2倍に増加し、インパクトファクターも増加いたしました。その反面、投稿にかかわる経費がかさみ、日本小児科学会の会計を圧迫する事態となりました。その解決策として、オンライン投稿にかかわる実費として、20米ドルを投稿料として申し受けることといたしました。投稿規程の改正とあわせ、オンライン投稿に際しインターネット上でも公表し、近日中に投稿料をいただく体制を整える予定でおります。本誌の質をさらに向上し、論文採択から発行までの待ち時間を短縮するためにも、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

郵送先:
〒112-0004 東京都文京区後楽1-1-5 第1馬上ビル4階
日本小児科学会
英文誌Pediatrics International
編集委員長 柳川 幸重


(登録:06.07.12)


■■ 日本脳炎についての質問書・要望書

平成18年7月5日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 日本脳炎ワクチンの定期接種における積極的勧奨が中止(以下、勧奨中止)されて(健感発0530001号、平成17年5月30日、全国都道府県衛生主管部(局)長宛、厚生労働省健康局結核感染症課長)、1年を経ております。それによれば、当面の勧奨中止であって、よりリスクの低いと期待される組織培養法による日本脳炎ワクチンの供給が出来た時の供給に応じ、接種勧奨を再開する予定である、とされています。

 質問:勧奨中止による影響と今後の動向について
 勧奨中止による影響について、厚労省Q&Aでは
「Q13 今回の措置により、日本脳炎が流行することはありませんか?
 A13 日本脳炎の感染源は日本脳炎ウイルスを媒介する蚊ですが、媒介蚊に刺されたからといって必ずしも発病するものでもありません。また、わが国では1970年代以降患者数は著しく減少しましたが、その理由としては予防接種の普及の他に、蚊のウイルス保有率の減少、環境改善による蚊に刺される機会の減少など複数の要因の組み合わせの結果と考えられています。
 そのために国内の多くの地域では、予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少し予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少していると考えられます。また、すでに予防接種をうけている年齢層では、ある程度の免疫を持っていると考えられます。これらのことから、本年予防接種をうけるべき年齢の方が予防接種をうけなくても、日本脳炎に感染し発症する機会は極めてまれと考えられます。」
 と説明しておられます。

 これについて日本小児科学会では、会員に対し見解として、日本小児科学会ホームページにて
「日本脳炎は潜在的危険性を持つ重症感染症であることには変わりがなく、日本にとって長い目でみて今後も必要なワクチンであると考えられます。しかし、ヒトからヒトへと感染が次々と広がる可能性はないこと、都会生活者が多いという現在の生活形態から多くの子供たちにとって感染のリスクが高いわけではないこと、急性脳炎としての顕性発症率は低いこと、などから、稀な副反応を危惧するのであれば、短期間(1年前後程度)広汎な接種はすすめずに、次世代ワクチンの出現を待ってもよいのではないだろうかと考えます。」
 と説明しております。

 最近、日本小児科学会が得た情報によれば、現在承認申請中の日本脳炎の組織培養細胞由来ワクチンは、その実用化には3〜5年が必要ではないかということです。
 日本小児科学会においては、日本脳炎予防接種勧奨の中止が短期間(1年前後程度)であれば、日本脳炎発生のリスクが高まることはないという見解を出しておりますが、国は「予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少していると考えられます」「本年予防接種をうけるべき年齢の方が予防接種をうけなくても、日本脳炎に感染し発症する機会は極めてまれと考えられます」「よりリスクの低いと期待される組織培養法による日本脳炎ワクチンの供給が出来た時の供給に応じ、接種勧奨を再開する予定です」と説明しておられますが、今後さらに3〜5年日本脳炎ワクチンが勧奨中止(実質上定期接種中止としている自治体が多い)の状況が継続した時のリスクはどのように考えておられるのかご説明頂きたいと思います。日本小児科学会はそのリスクは1年前後として会員に説明をしておりますが、感受性者の蓄積はそのリスクを高めるものと危惧しております。

要望:
1. 接種希望者への定期接種としての接種について
2. サーベイランスの強化について

1. 今回の措置は、定期接種の積極的勧奨の一時中止であって、定期接種の中止ではないところから、定期接種としての日本脳炎を希望する人に対しては、国はQ&Aによって
 Q16 組織培養法による日本脳炎のワクチンが承認されるまで、日本脳炎の予防接種は受けられないのでしょうか?
 A16 日本脳炎の流行地域へ渡航する者、蚊に刺されやすい環境にある者など、日本脳炎に感染するおそれが高い場合などで、本人又は保護者が特に希望する場合には、今回の措置と日本脳炎ワクチンの効果及副作用を医師から説明を受け、同意書に署名した上で現行の日本脳炎ワクチンの接種を受けることは差し支えありません。
 として、ことにハイリスクあるいは心配な方に対しては定期接種が可能であることを示しておられます。

 日本小児科学会はこれについて、会員に対して日本小児科学会ホームページにて
 感染リスクの高い生活環境にある子どもである場合(ブタにおける日本脳炎ウイルス感染が高い地域での郊外生活、あるいはそのような地域での長期滞在、アジア地域への長期滞在{ことに雨期}など)には、稀な理論的リスクより感染リスクによる健康障害の可能性が高くなるので、小児科医として個別に接種をすすめるという考え方は妥当であると考えられます。この場合、従来の日本脳炎ワクチン定期接種年齢の範囲であれば、従来通り定期接種として扱われます。それ以外の年齢では、これも従来通り任意接種の扱いです。今回の国の決定は、「国による積極的な勧奨は控える」というものであり、日本脳炎を予防接種法による定期接種対象疾患から外したわけではありません。したがってこれまでの定期接種対象となる年齢の小児に対してinformed consentを得た上での日本脳炎ワクチンの接種は、費用の負担、万一の場合の事故の救済などについて、従来通り定期接種としてみなされることは国からの説明でも明らかです。したがって、定期接種としての年齢にある接種希望者に対しては、予防接種の実施主体である自治体は、これに対応すべき責務があり、適切な方法によって予防接種を行う限りは個々の接種医師の責任ではないことも従来通りであると考えられます。
 と説明しております。

 しかし実態は多くの自治体において、実質上は定期接種中止と同様の扱いになっており、希望者が容易に接種できる状況になっていません。これにつきましては、定期予防接種の積極的勧奨の差し控えの通知にある「定期接種対象者のうち日本脳炎に感染する恐れが高いと認められる者等については、・・・・・同意を得た上で現行の日本脳炎ワクチンを使用した接種を行うことは差し支えない」という点について、再度自治体に対して認識すべきことを促し、希望者への定期接種が速やかに円滑容易に行われるよう求められますよう、強く要望致します。

2. 予防接種勧奨中止により感受性者の蓄積があること、そして再開されたとしても三期接種が中止になっているという点から、これらについての妥当性あるいはリスクが生じるかどうかなどについて、医学的に検証して行く必要があります。それらの基礎的なデーターになるのは、サーベイランスによる疾病の動向あるいは、血清疫学調査、感染源としてのブタ調査であります。疾病の発生動向は、既に4類感染症としての日本脳炎(全数報告)および5類感染症急性脳炎(全数報告)、5類感染症無菌性髄膜炎(基幹病院定点報告)で知ることができ、また血清疫学調査、ブタ調査については感染症流行予測調査事業において行われているところでありますが、現在のような状況では、日本脳炎および急性脳炎、急性髄膜炎そして感染症流行予測調査事業における日本脳炎のサーベイラス強化を行い、より精緻なデーターを入手することがリスクの評価、そしてリスク管理の上で重要であると考えられます。この点から日本脳炎およびその関連についてのサーベイランスの強化が行われることを、強く要望致します。


(登録:06.07.12)


■■ 麻疹サーベイランス強化(全数把握)に関する要望

平成18年7月5日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 麻疹対策は現在世界的規模で取り組まれておりますが、我が国においても1歳児に対する麻疹ワクチン接種率の向上を図ることによって、数年前までは年間推計20〜30万人の発生があったものが、平成17年には年間報告数が545人(推計5000人前後)にまで減少したことは、大変喜ばしいことです。さらに平成18年4月1日より法改正により麻疹、風疹の定期予防接種として、MRワクチンによる2回接種法の導入を行い、追って政令附則第2条の削除を行ったなどは、我が国における麻疹及び風疹対策の強化として大いに歓迎すべきことであることは、これまでにも表明してきたところです。
 しかしこれで一気に疾患の排除(elimination)にまですすむわけではなく、残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生、そしてこれらによる感染の循環が当面続くことは、これまでにも海外において経験されているところです。したがってわが国においてはその対応策としてまずサーベイランスを強化し、発生状況を正しく把握し、適切に速やかに感染拡大を予防するための対策をとることが重要であると思われます。
 今回、茨城県南部、千葉県等で麻疹の集団発生が見られていることは、まさにこれらを示すものと考えられ、適切かつ迅速な対応が望まれるところであります。
 現在の我が国の麻疹のサーベイランスは、全国約3000カ所の小児科医(小児科標榜医療機関)が定点として協力しておりますが、最近のように年間数千例規模になってくると、地域的なアウトブレイクやその波及および拡大については定点のみからの報告では、その詳細な状況の把握は不可能です。茨城県南部、千葉県における麻疹の流行的発生も、全体から見れば少数であり、定点からの報告ではその状況は把握できていません。さらに今回の流行からその後の感染の波及の有無を知ろうとしても、定点のみからの報告では把握ができず、一定規模になって初めて検知できることになり、結果として対策の遅れが生ずることが危惧されます。従って今後の我が国では麻疹のサーベイランスについては、その流行や発生状況の詳細を把握し、効果的な対策を講じるために、これまでの定点報告から全数報告に切り替えて強化する必要があります。今回の茨城県南部・千葉県における麻疹のアウトブレイクは、そのことを如実に示しているものと考えられます。
 我が国が属するWHO西太平洋地域(WPRO)では、2012年を麻疹排除(elimination)の目標としていますが、現在の定点報告では少数小規模発生の把握が出来ず、真の排除が達成されているかどうかの確認も出来ず、また発生の確認が遅れれば対応もさらに遅れ、設定されたeliminationの目標からわが国が遠のくことが危惧されるところです。
 日本の麻疹対策のステージがcontrol phase(コントロール期)からoutbreak prevention phase(発生予防期)に変わりつつある今、以上の点から麻疹対策強化に必須の事として、麻疹サーベイランスの強化、すなわち麻疹については全数把握を行うことを可及的速やかに実現していただくよう強く要望するものであります。


(登録:06.06.21)


■■ 臓器移植関連法案改正についての日本小児科学会の考え方

 臓器移植関連法案改正については、日本小児科学会として、その考え方を度々表明してきたところですが、改正案が国会へ再提出されておりますので改めてその問題点を指摘し、当会の考え方を表明いたします。
 日本小児科学会の臓器移植の考え方は、現時点ではB案(臓器摘出の意思表示を現行法の15歳以上から12歳以上に引き下げるなどの案)に近いものです。もしいきなりA案(本人の臓器提供の意思が不明でも、遺族の書面による承諾があれば臓器摘出が可能などとする案)に沿って、年齢制限も設けず小児脳死臓器移植が行われる場合は、ほとんどの病院で基盤整備(※)が行われていない現状においては、現場で混乱が起こるのは必至であります。したがって、数年間の期限付きでB案を施行する中で、その間に厚労省の責任で基盤整備をすることが望ましいと考えます。そして、基盤整備ができた後に、より低年齢の小児にも脳死臓器移植が行われるような法案整備を進めるべきであると考えます。なお、今回の法案に盛り込まれている親族への優先項目については、公正性から疑問があります。

※基盤整備とは、以下のことを指す。
1.虐待児からの臓器摘出防止に関する基盤整備
2.小児の脳死の判定基準の検証ならびに再検討
3.小児の意見表明権の確保に関する基盤整備

2006年5月21日

日本小児科学会

会 長 別所 文雄
小児脳死臓器移植に関する基盤整備ワーキング委員会

委員長 清野 佳紀


(登録:06.05.09)


■■ 麻疹および風疹の定期の予防接種に係るワクチンについての要望

平成18年4月20日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 平成18年4月1日より麻疹および風疹予防接種について2回接種を導入するとともに、乾燥弱毒生麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を定期接種として採用したことは、我が国における麻疹および風疹の対策の強化として大いに歓迎すべきことであることをこれまでに当学会としても表明してきたところです。
 しかし、省令によって麻疹および風疹の定期接種としてMRワクチンのみが採用されたこと、および政令附則第2条によって「改正政令施行前に麻疹または風疹の予防接種を受けたものおよび任意で当該予防接種を受けたものについては定期予防接種の対象とならない」とされたことにより、以下のように麻疹および風疹に対して定期接種のワクチンによって免疫を付与することができない者が現れることになり、麻疹および風疹対策として大きな制約が出てきました。

・麻疹罹患・風疹ワクチン未接種者への、1期および2期における風疹ワクチン接種
・風疹罹患・麻疹ワクチン未接種者への、1期および2期における麻疹ワクチン接種

・麻疹罹患・風疹ワクチン接種すみ者への、2期における風疹ワクチン接種
・風疹罹患・麻疹ワクチン接種すみ者への、2期における麻疹ワクチン接種

・麻疹ワクチン接種すみ・風疹ワクチン未接種者への、1期におけるMRワクチン、または風疹ワクチン接種。および2期におけるMRワクチンまたは麻疹、または風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)
・風疹ワクチン接種すみ・麻疹ワクチン未接種者への、1期におけるMRワクチン、または麻疹ワクチン接種。および2期におけるMRワクチンまたは麻疹ワクチン、または風疹ワクチン接種(原則はMR)

・麻疹ワクチンと風疹ワクチン接種すみ者への、2期におけるMRワクチンまたは麻疹ワクチン、または風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)
・麻疹ワクチンと風疹ワクチン未接種者への、1期および2期における麻疹ワクチンまたは風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン。現行でも接種可能)
・MRワクチン接種者への、2期における麻疹ワクチンと風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)

 平成18年3月31日、厚生労働省結核感染課から、各都道府県衛生主幹部(局)予防接種担当者宛へ事務連絡として、麻疹単抗原ワクチンおよび風疹単抗原ワクチンを定期接種として行えるようにする可能性があることについて示されました。これに係わり、政令附則第二条の削除、および定期接種としてはMRワクチンを原則としてすすめるが状況に応じて麻疹および風疹の単独抗原ワクチンも使用できるとように省令改正が行われるのであれば、指摘した上記問題点の解決に結びつくものであると考えられます。またそのことは日本小児科学会衛藤義勝会長より平成17年6月26日に厚生労働省健康局結核感染症課牛尾光宏課長あてに提出した要望の主旨にかなうものでもあり、日本小児科学会は、この事務連絡を強く支持し、上記解決に結びつくような政省令改正につながることを強く要望するものです。

 自然感染あるいはワクチンによる免疫既獲得者に対する生ワクチンによる重ねての免疫の投与が安全に行われることは医学的にも正当であり、またこれまでに世界的に広く行われていることでもあります。また、多くの生ワクチンはウイルス抗原以外のワクチン液成分がほぼ同一であり、これまでにも異なる種類の単抗原ワクチン(例:麻しんワクチンと風しんワクチン等)を接種してきたことから、その安全性については既に証明されているところです。平成18年4月1日に行われた制度改正は麻疹および風疹対策を強化する事を目的としているものと考えられますが、一方改正によって免疫が付与される機会を失った子ども達が蓄積される可能性が残されることは、それぞれの子ども達の麻疹および風疹の感染予防、そして両疾患の今後の公衆衛生対策に大きな問題を残すものであり、早急な解決を要望するところであります。

 今回定期接種を1期(生後12〜24ヶ月)、2期(小学校入学前1年間)としたことも、麻疹風疹対策として正当なことと考えるところですが、法改正に関する周知徹底の遅れ、該当ワクチンの不足、その他の疾患罹患などやむを得ない事情により未接種となっている子ども達が、法施行日以降定期接種対象外となりいわゆる接種漏れ者のままとなっており、これらに対する何らかの対策設置が必要であります。施行日時点での年齢別ワクチン接種率は現在不明ですが、この年齢層(2歳以降、小学校入学1年前まで)では麻疹に関して各年齢の5〜10%、風疹に関し同じく20〜30%が、ワクチン未接種のままとなる可能性が国立感染症研究所感染症情報センターより報告されております。
 これらの子ども達に対して、一定期間の間に、麻疹および風疹に関する1回目の免疫を付与し、なおかつこれらの子どもたちを含めて等しく2回目の免疫付与の機会を留保しておくことは、それぞれの子ども達の麻疹および風疹の感染予防、そして両疾患の公衆衛生対策として重要であります。この点についても国あるいは自治体において何らかの措置をとって頂くことを強く要望致します。


(登録:06.05.09)


■■ 麻疹及び風疹の予防接種に使用するMRワクチンの安全性についての見解

平成18年4月20日

厚生労働省健康局結核染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 平成18年4月1日より麻疹及び風疹の予防接種について2回接種を導入するとともに、乾燥弱毒生麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を定期接種として採用したことは、我が国における麻疹及び風疹の対策の強化として大いに歓迎すべきことであることをこれまでに当学会としても表明してきたところです。
 さらに加えて、政令附則第2条の削除による2回接種の早期の実施、及び定期接種としてはMRワクチンを原則として勧めるが、状況に応じて麻疹及び風疹の単抗原ワクチンも使用できることとする省令改正が行われるのであれば、国内での麻疹、風疹及び先天性風疹症候群の排除が一層早まるとともに、各種の課題の解決にも結びつくものであると考えられます。
 2回接種の導入には、科学的知見に基づく既接種者への安全性を確認の上、実施されることとなっていますが、当学会における麻疹及び風疹の定期の予防接種に係るMRワクチンの安全性についての見解は以下のとおりです。

 自然感染あるいは生ワクチンによる麻疹、風疹などの免疫既獲得者(この中には免疫が成立しなかった者が極少数含まれる。)に対し生ワクチンによる重ねての免疫の投与が行われると 1)免疫のない者には免疫の成立 2)免疫の弱い者には免疫の増強 3)免疫を十分持つ者には無反応ないし弱い免疫反応のみが生じ、生体にとって不利な反応が生じることはなく、これらが安全に行われると考えることは医学的にも正当であり、また、これまでに世界的に広く行われていることでもあります。
 多くの生ワクチンはウイルス抗原以外のワクチン液成分がほぼ同一であり、これまでにも異なる種類の単抗原ワクチン(例:麻疹ワクチンと風疹ワクチン等)を接種してきたことから、異なるあるいは同一の生ワクチンを重ねて接種することについての安全性については既に証明されているところです。
 これまでにも学会、論文、あるいは研究班における発表などで生ワクチンを重ねて接種した効果と安全性に関する報告は多く存在します(最近発表された研究報告を代表例として別記します。)。
 したがって、麻疹及び風疹の定期予防接種においても、生後12〜24月及び5歳以上7歳未満の時期に、対象者にMRワクチンを2回接種することについての安全性については十分肯定しうるものと考えます。

別記

1)国内のデータ

  1. 5〜6歳児及び11〜12歳児への麻疹ワクチン、風疹ワクチンの2回接種の有効性と安全性
  • 厚生労働科学研究 新興・再興感染症研究事業「ポリオ及び麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究(H15─新興-21 主任研究者・加藤達夫)」平成16年度報告書(「麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究」高山直秀ら)
 麻疹及び風疹ワクチン接種歴が明らかな5〜6歳児、及び11〜12歳児の麻疹、風疹抗体(HI)を測定し、それぞれ抗体価が16倍以下の者にそれぞれのワクチンを再接種した。使用した麻疹ワクチンは北里研究所及び武田薬品、風疹ワクチンはこれら2社に加えて化血研であった。双方の抗体価の低い児では麻疹ワクチン、風疹ワクチンを同時接種した。
 再接種後1か月目に再度抗体価を検査したところ、麻疹ワクチンを再接種した6歳児34名中24名で、12歳児33名中29名で有意の抗体価上昇が認められ、風疹ワクチンを再接種した6歳児9名の全員、12歳児8名中7名で有意の抗体価上昇がみとめられた。いずれの接種でも発熱、局所反応など軽微な副反応のみ認めた。
  1. 2回目の麻疹ワクチン接種に関しての安全性の報告
  • 沖縄県における乳児への麻疹ワクチンの安全性と有効性の調査(沖縄県小児保健協会知念らによる調査、2006年日本小児科学会沖縄地方会などで発表):
 平成13年の沖縄における麻疹流行時に、月齢6〜11か月において麻疹接種を受けた572人の群(うち80%が1〜3歳の間に麻疹ワクチン再接種)と、受けなかった1438名の群(うち88%が1〜3歳の間に麻疹ワクチンを接種)を3歳児検診の際に比較。これまでの病歴(中耳炎、気管支炎、肺炎、喘息、口腔カンジダ症、下痢・消化不良、免疫不全、その他入院を必要とした疾患)につき比較したが有意差はみられなかった。
  • 厚生労働科学研究 新興・再興感染症研究事業「成人麻疹の実態把握と今後の麻疹対策の方向性に関する研究(H13─新興-8 主任研究者・高山直秀)」平成14年度報告書(「陸上自衛隊における集団麻疹予防接種について」岡部信彦ら):
 平成13年5月沖縄県の陸上自衛隊の部隊で麻疹流行があり、30歳未満の隊員509名が麻疹予防接種をうけた。そのなかの471名が接種前に抗体調査を受け、うち463名(98%)が既接種または既罹患者であったことが確認された。これらを含む接種者476名に接種当日から6週間後までの間副反応の有無の調査が行われたが、確認された副反応は発熱(12人)、接種部腫脹(14名)のみであった。

2)海外のデータ:

  • 先進国で2回接種スケジュールが確立するのは主に1990年代であり、それまでに殆どの先進国がMMRワクチンに移行しており、麻疹・風疹ワクチンの2回接種の安全性と有効性に関する海外の研究は主にMMRワクチンの2回接種の知見に基づく。
  1. 既接種者・既罹患者における安全性
  • カリフォルニアにおけるHMOの大規模データベース(約8500人)を使った研究では、4〜5歳時におけるMMRワクチン2回目の接種後1か月以内の重篤な副反応は確認されなかった(DavisらPediatrics, 1997:“MMR2 Immunization at 4 to 5 Years and 10 to 12 Years of Age: A Comparison of Adverse Clinical Event After Immunization in the Vaccine Safety Datalink Project”)
  • すでに麻疹、風疹に免疫をもっている米国大学生及びオーストラリアの小・中学校生徒に麻疹ワクチンまたはMMRワクチンを集団接種した複数の報告でも、発熱、発疹など通常期待される以上の副反応はみられず、その頻度は1回目の接種で期待されるより少ないことが確認されている(Chen et a. Vaccine 1991“Adverse events following measles-mumps-rubella and measles vaccinations in college students”ほか)。
  • 日本のMRワクチンおよび単抗原ワクチンはゼラチンを含まず、欧米で使われている安定剤としてゼラチンを含んでいるMMRワクチンよりもアナフィラキシーなどのアレルギー症状の出現頻度はより少ないことが推測される。この点からも、麻疹、風疹単抗原ワクチン、及びMRワクチンの2回接種は、海外において広く使用されているMMRワクチンの2回接種と同等あるいはそれ以上の安全性があると考えられる。

有効性:

  • MMRワクチンは既存の3つの単抗原ワクチンの株を単に混合させたものであり、MMRワクチン2回接種の結果から、各単抗原ワクチン及びその組み合わせであるMRワクチン2回接種の有効性は評価できると考えられる。MMRワクチンの2回目接種、及びMMRワクチンに追加したMRワクチンの接種により、集団として麻疹、風疹のいずれも抗体価は有意に上昇することが確認されている(Pebodyら.Vaccine. 2002. “Immunogenicity of second dose measles-mumps-rubella (MMR) vaccine and implications for serosurveillance”)。
  • 学校における麻疹集団発生でも2回接種者の罹患率は1回のみの接種者の罹患率よりも低いことが複数の研究により示されている(Vitekら Pediatric Infectious Disease Journal. 1999.”Increased protections during a measles outbreak of childred previously vaccinated with a second dose of measles-mumps-rubella vaccine”など)。
  • これらの2回接種の効果はMRワクチンにも期待される。


(登録:06.04.25)

■■ 21世紀の小児医療の展望と改革に向けて
2004年〜2006年日本小児科学会理事会活動報告
日本小児科学会
会長 衞藤義勝

 我国の医療界は大きな変革の時代を迎えております。少子高齢化の時代にあり、医療費の大幅な削減、医療制度改革、病院機能の改革、初期研修制度改革など様 々な変革の時代を迎えております。このような状況下で小児医療も大きな変革の波を受け、21世紀の新しい展望が必要であり、且つその改革のスピードは急務 を要します。日本小児科学会は、我国の小児医療の発展の為に大きな責任を持っております。今年度の4月の総会で学会理事会は任期を終了するわけであります ので、2004年〜2006年の2年間の理事会の業務報告をここに報告書としてまとめさせて頂きました。
  私は会長として2期4年間を努めさせて頂き、何とかこの大所帯の日本小児科学会を運営させて頂くことができましたことを、理事、代議員、会員の先生方に深く感謝申し上げます。この小冊子に、私共の理事会がこの4年間で小児医療の展望と改革に向けての事業として行ってきた主な事業20項目を、以下のようにまとめてみました。

  1. 事務局改革:
    事務職員の職制度の整備、意識改革、就業規則の見直し(定年制、給与体系の見直し等)
  2. 学会組織の整備:
    (1)部局制を引く
    (2)部長制度の導入、役割
    (3)委員会組織の見直し、委員会、プロジェクトチームの編成
    (4)医療政策室の設立(常設組織)
    (5)理事会諮問委員制度の導入(3〜4人)
    (6)幹事制度の導入
    (7)会長、副会長選出手順を定める
    (8)代議員の連携を進めるための連絡網の整備
  3. 小児医療提供体制の整備:
    (1)小児救急体制モデル案の作製
    (2)小児救急フォーラムの開催(年2回)
    (3)小児科学会小児救急ホームページの作製
    (4)小児救急連絡協議会の設立
    (2003年より、日本医師会、日本小児科医会、日本小児外科学会、日本小児救急学会、日本小児科学会、厚生労働省との定期会議、年4回)
  4. 診療報酬プロジェクトチーム:
    (1)小児科診療報酬の向上に向け監督官庁と討議
    (2)大学、病院小児科診療報酬プロジェクトチームの編成
    (3)包括医療改善プロジェクトチームの編成
    (4)厚生労働省、国会議員連盟との会合
  5. 少子化対策プロジェクトチームの設立:
    (1)小児科医会、日本保健協会との連携事業、提案書作成
    (2)日本産科婦人科学会との連携フォーラム、理事会の開催(帝国ホテル)
  6. 女性医師の環境改善プロジェクトチームの設立(2002年より)
    (1)女性医師の働く環境作りの為のフォーラムを開催
    (2)厚生労働大臣に要望書を提出
  7. 学術委員会の設立(2003年に立ち上げ):
    (1)学術総会の在り方検討
    (2)日本小児科学会賞の設立(2006年より、第1回川崎富作先生受賞)
    (3)学術セミナーの在り方検討
    (4)データーベースの作成
  8. 初期研修制度の充実プロジェクト:
    (1)初期研修手帳の作成
    (2)初期研修制度への提言
    (3)初期研修病院の指定の見直し
  9. 専門医充実プロジェクトチーム:
    (1)ガイドラインの充実
    (2)専門医研修手帳作成
    (3)認定医から専門医への移行
    (4)更新、認定費用の値上げ
  10. 予防接種、感染対策委員会:
    (1)麻疹撲滅運動(フォーラムの開催)
    (2)名称変更
    (3)ガイドラインの作成
    (4)チメロサールの除去の要望
    (5)ポリオ、インフルエンザワクチンの要望他
  11. 広報委員会:
    (1)ホームページの充実
    (2)記者会見の開催
    (3)作文コンクールの開催
    (4)こども健康週間の開催など
  12. 薬事委員会:
    (1)オーファンドラグへの取り組み
    (2)未承認薬への取り組み その他
  13. こどもの脳死臓器移植プロジェクト:
    こどもの脳死臓器移植への提言
  14. こどもの生活改善良委員会:
    (1)煙害の防止キャンペーン
    (2)テレビメディアへの警告
    (3)チャイルドシートへの提言
    (4)こどもの肥満防止
  15. こどものこころの問題委員会:
    (1)虐待防止委員会の設立
    (2)こどものこころに対するキャンペーン活動、フォーラム開催
    (3)病棟保育士の問題
  16. 国際渉外委員会:
    (1)国際小児科学会の日本誘致運動(メキシコ、2004年、今回2013年に向け努力)
    (2)米国小児科学会への相互参加、日米理事会の開催
    (3)アジア小児科学会との連携事業
    (4)ASPR(Asian Society of Pediatric Research)の設立(第1回日本開催)
    (5)日本―中国―韓国小児科会議開催(2003年)
    (6)米国―アジア小児科研究会議2008年ハワイ開催
  17. 和文誌、欧文誌編集委員会:
    和文誌の表紙の改定(2003年)審査方法の改定
  18. 全国小児医療連合会の開催(年1回)小児医療の連携
  19. 厚生労働省との定期協議開催(年2回、局長、各担当課長参加):
    重要案件の審議
  20. 国会議員との定期会議開催(自民党、民主党、公明党)

 以上、日本小児科学会の理事会がこの2〜4年間に手がけた20の主な項目について記載致しました。抜けている部分もあるかと存じますが、詳細に関しては各章をお読みください。各委員会、プロジェクトチームの理事、委員会委員長、委員、代議員、会員の先生方の絶大な御努力、御指導のお陰で大きな成果が挙がったものと感謝申し上げます。今後新しい理事会で、今回の理事会の積み残した事、多くの小児医療の問題点を改善し、大きな飛躍を願い、更なる期待を致しております。
  多くの会員の皆様の絶大なる御支援、有難うございました。


(登録:06.04.25)


■■ 国会議員との意見交換を開催
 

平成17年2月25日(金曜日)衆議院第二議員会館会議室において、公明党少子社会総合対策本部(本部長:坂口力前厚労相)と「少子化の課題及び小児医療を取り巻く現状と課題」についてのヒヤリング及び意見交換を行った。
 当学会から、衞藤会長、山城副会長、安田理事、中畑理事、藤村理事、五十嵐先生(東京大学)、横田先生(横浜市立大学)が出席し、公明党から神崎代表、浜四津代表代行、冬柴幹事長、坂口本部長ほか多数の衆参国会議員が出席された。
 議題として、(1)日本小児医療の問題点、(2)社会保険診療報酬改定の小児科要望事項、(3)小児医療提供体制の改革ビジョン、(4)小児科初期研修制度の改革の樹立に向けて、(5)(仮称)小児保健法に包含すべき内容、(6)病棟保育士の意義、(7)卒前及び初期研修医教育の現状と改善の方策について、(8)小児医療改善のための要望事項などについて当学会から説明の後、意見交換を行った。2時間にわたり活発に意見交換が行われた。

 平成17年3月10日(木曜日)衆議院第二議員会館会議室において、民主党医療問題プロジェクトチーム(座長:五島正規)、次世代育成支援(少子化対策)プロジェクトチーム(座長:水島広子)の合同会議と「少子化の課題及び小児医療を取り巻く現状と課題」について意見交換を行った。
 当学会から衞藤会長、山城副会長、別所理事、安田理事、大澤先生(東京女子医科大学)、五十嵐先生(東京大学)が出席し、民主党から五島正規衆議院議員、水島広子衆議院議員、足立信也参議院議員、岡本充功衆議院議員、ほか多数の衆参国会議員が出席された。
 2月25日(金曜日)公明党少子社会総合対策本部との意見交換における議題に女性医師の職域での環境改善についての要望を加え、当学会から説明の後、意見交換を行った。2時間にわたり内容のある意見交換が行われた。
  平成17年4月に自民党と同様の会議を予定している。

国会議員との意見交換を開催

 平成18年4月5日(水曜日)衆議院第2議員会館会議室において、自民党子どものこころとからだ危機突破議員連盟(会長:堀内光雄衆議院議員)と「少子化問題及び小児科医療の現状と課題」についてヒヤリングや意見交換を行った。
 当学会から、衞藤会長、山城副会長、安田理事、藤村理事、桃井総会議長、大澤理事会諮問委員が出席し、自民党から堀内会長、根本幹事長、上川政策幹事、佐藤事務局長、他多数の衆議院議員が出席された。
 議題として、
 (1)小児救急問題
 (2)少子化対策
 (3)診療報酬の確保
 (4)小児科医の確保
 (5)初期研修制度の確保
 (6)大学内小児病院&母子センター科への整備
 (7)保育、育児環境の整備
 (8)こどもの心の危機への対策
 (9)子育てへの経済的支援
 (10)思春期問題への支援
などについて当学会から説明の後、意見交換を行った。
 約2時間にわたり内容のある意見交換が行われた。


(登録:06.01.20)


■■ 米国小児科学会(AAP)75周年記念大会に参加して―新しい学会開催の在り方
日本小児科学会
会長 衞藤義勝

 今回米国のワシントンで開催されたAMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS(AAP)の75周年記念大会に招かれた。10月8〜11日の4日間首都ワシントンの国際会議場で約1万人を集めて盛大に開催され、第1日目はAAPのベルコビチ会長が基調演説をされ、子供が現在おかれている様々な問題(子供の心、事故防止など)を、また国際小児科学会会長のグレンジ教授が世界の子供たちのエイズ、結核、栄養障害など悲惨な状況を広く世界に啓蒙する演説をおこなった。非常に多くの演題があり、特に教育講演は充実しており、毎日数10のテーマについて20以上の会場でおこなわれ、それも早朝6時からプログラムがあるのには驚きであった。基調講演も毎朝8時から5つぐらいあり、それも臨床に直結して即利用可能な内容である。開業医を中心とした参加者は極めて熱心で、皆メモをとり討論も活発である。また、症例問題のようなセッションもあり、参加者がコンピュータとやりとりしながら進めている光景も日本では見ない形式である。画像診断の他、発熱、頭痛、痙攣などのありふれた症状から何を考えるかなど、たいへん面白い手法で症例問題を提示している。とにかく各人が真剣である。卒後教育の重要な一貫としての極めて興味深い企画が多い。最新の知見を十分に吸収できるシステムであり、一般的な応募演題がずらりとならんでいるのではなく、現在の小児医療の基礎からトピックスまで、その道の専門家が効率よく教えてくれるシステムなのである。
 第2日目の75周年記念祝賀会では、数千人が大ホールに集まり、記念演説、さらにはコメデイー、音楽など多彩な行事がおこなわれた。アメリカらしい夢にあふれたこの祝賀会には世界主要国の小児科学会会長、米国の著名な小児科医が多数招かれていた。大会3日目には昼食会が催され、AAP 75年間の歩みと役員の業績が紹介され、併せて新旧役員がスピーチされた。私の隣は彼の有名なヌーナン教授、75〜6歳ぐらいか、1968年にヌーナン症候群を報告した方である。優しい感じの女性で、現在もレキシントンのケンタッキー大学で活躍されている。AAPは開業医並びに大学・病院のgeneral pediatricianを中心とした学会で、我が国では日本小児科医会に相当するが、会員数は5万5千人と大変多く、日本小児科学会にあたるPediatric American Society(PAS)とは対象的に大変政治力を持っており、事務職員も400人、この内専任医師も5-6人と組織の巨大さを感じる。このためか学会の参加費も800ドルと日本の約8倍である。今回は米国小児科学会からの招聘で参加したので良かったのだが、もし日本から一般参加するとなると費用はかなり高くつく。話題を大会に戻すが、大ホールでは毎日多数の企業展示がおこなわれ、おそらく80社位か、沢山の人が大きなバッグに資料や記念品を山ほど入れて行き来してイベント会場のようである。ここは夕方になると会員懇親会と化し、和やかな雰囲気の中、メーカーが競ってワイン、ビール、スナックなどを提供している。また、驚いたことにここでは全米の小児病院がブースを出し、自分たちの病院の得意分野、特に肝臓移植、小腸移植、心臓移植などの実績をアピールして参加者に患者紹介を募っている。スタッフは参加者からの問い合わせに対応すべく美しいパンフレットを用意して常にブースで待機している。企業だけでなく、米国の小児病院・医療者間の競争の凄さを見せつけられる光景であった。
 今回のAAP出席はたいへん新鮮な経験となった。米国を模倣する必要はないものの、我が国の現状に即した新しい学会の開催形式を模索すべき時に来ていると思われた。
 今回のAAPの学会は皆大変熱心であり、多くの会員が参加し、特に最近の傾向としては高次脳機能障害(ADHD、LD、自閉症など)が重要な分野となり、こどもの心を如何に育てるかが最近の大きな課題となっている。演題の恐らく4分の1はこの分野の教育講演であり他は感染症、予防接種、アレルギーなどの演題が多い。教育を重視するやり方を日本の小児科学会にも取り入れる必要があると強い印象を受けた。又これからの学会のあり方で、会場の運営、演題の選定には大変細かい検討がなされた後があり、学会事務局が中心となり運営をしており、全米の数箇所(ワシントン、サンフランシスコ、シカゴ、ニューオリーンズ、ボストン)を回りもちで巡回しており、会長は一年の任期であるが、日本のように会頭の大学がお金を集める必要もなく、専任の事務局スタッフが400名以上いるので学会開催は慣れており、何回もプログラム会議が開かれ又事後の一つ一つの演題も会場の会員から評価されて、次回のプログラム造りに利用されている。今回AAPの学会に参加して、これからの日本小児科学会の開催方法に関して極めて重要な方向性を見出した気持ちである。日本小児科学会にも昨年から今後の学会開催のあり方を検討するためにプロジェクトチーム(委員長:杉本京都府立大学教授)を作り検討中である。日本でも他の大きな学会は最近まとめて開催する傾向にある。例えば、Child weekと称して、日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児救急学会、外来小児科学会などが集まり春に、また秋には小児科学会の各分科会、日本小児科学会セミナーなどが同時に1週間ぐらいかけて開催したらどうでしょうか?
 いずれにしても、今後のわが国の学会の方向性を模索する時代となり、今回のAAPの学会から多くのことを学んだ次第である。



(登録:06.01.11)


■■ タミフル(カプセル製剤)の適正使用に関する見解とお願い

2006年1月10日
日本小児科学会会長 衞藤 義勝

タミフル(カプセル製剤)については新型インフルエンザの発生に備えて、国・都道府県で2100万人分を備蓄することとされ、現在準備が進められてきているところです。しかし準備完了は早くても平成19年7〜9月となると見込まれており、この間の備蓄に関しては、一般に流通しているタミフルにも頼らざるを得ない状況となっています。この為、特に今シーズンについては、タミフルの適正使用を徹底し、備蓄を進めることが厚生労働省から要請されています。こうした状況に鑑み、日本小児科学会の会員の皆様にはタミフルの使用に関して下記の項目の遵守にご協力をお願い致します。

  1. できる限り迅速キットでインフルエンザと診断された症例に処方
  2. 発症後48時間以内の症例に使用
  3. 予防投与は適応症例即ち13歳以上のハイリスク者に処方すること。患者の同居家族または共同生活者で65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者、代謝性疾患患者、腎機能障害者にのみ処方

以上宜しくご理解の上御協力をお願い致します。



■■ トルコでの国際小児科学会理事会に参加して

9月11、12日に開催された国際小児科学会において
 左:Schaller総務担当理事(前会長)
 中:Dogramaci教授(国際小児科学会名誉会長)
 右:衞藤

 本年9月10〜13日、トルコのイスタンブールで国際小児科学会の理事会が開催されました。ナイジェリアのGrange会長、Schaller総務担当理事(前会長)Chok-Wan Chan 次期会長を含めた20人余りの理事が参加してイスタンブール郊外のヒルトンホテルで開催され、朝8時から夕方まで世界のこども達の問題、特にエイズ、結核、栄養障害のこども達の救済、戦争の被害を受けたこども達の支援等を含めて討議されました。また、国際小児科学会のこれからの運営方針、学会の規範作りなど細かい討論もされました。
 9月11日には、本会名誉会長でトルコの著名人であるDogramaci教授(91歳)夫妻による会長以下全理事を招聘しての夕食会がイスタンブールでも最高級のホテルで開催され、名誉会長の健在ぶりが印象的でありました。私も老教授とお話ししましたが、91歳には見えない矍鑠たる大人物でありました(写真)。Dogramaci名誉会長は小林登東大名誉教授とも大変御親交があつた方で、現在もなお国際小児科学会の運営に相当の影響力をお持ちのようです。
 さて、2013年の国際小児科学会を日本に誘致することは既に本年の理事会で決定されました。国際学会を誘致するには今後色々と政治的な運動もする必要があるとは思いますが、同学会の誘致が我国の小児医療の益々の発展に少なからず寄与することを願っています。開催国は2007年のアテネでの国際小児科学会において選出される予定です。現在の情報ですと少なくとも5〜6カ国が立候補するとのことで、Dogramaci先生のお膝元トルコも立候補予定と聞き、誘致成功には可成りの努力が必要なものと覚悟しなければなりません。このためにも若い小児科医の強力なエネルギーが必要です。国際的にも通用する人材を学会は率先して養成するべきでしょう。機関銃のように英語が飛び交う中でも語学力は勿論、学問的にも存在感を示せることが大切なのです。世界にアピールできる若い力の必要性は何も小児科学会・医学会に限ったことではなく、大きくは国連安保理常任理事国入りを目指す国際政治の舞台においても不可欠となっているのではないでしょうか。世界で羽ばたく小児科医の育成に、日本小児科学会としても今後更なる努力を惜しまず、一致協力して邁進できることを心から願ってやみません。

日本小児科学会
会長 衞藤義勝


(登録:05.11.30)


■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
(平成17年11月30日)

平成17年11月30日
社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 日本小児科学会はタミフルに関して予防接種・感染対策委員会にて討議した結果 下記の通りの見解を表明する。

 米国FDA(Food and Drug Administration)が発表した小児死亡例(いずれも日本における発症例で、平成17年11月日本小児感染症学会で報告された例も含まれている。FDAは、タミフルと報告された小児死亡との間に因果関係があるとは結論づけられない、との見解を示している)について、検討を行った。

 得られた資料に記載されている死亡例に生じた事象は、タミフル未使用のインフルエンザにおいても国内外で同様の事象(急性死、精神/神経症状、脳症/脳炎症状、心筋炎、肺水腫、肺炎等)がみられるもの、あるいはインフルエンザによって基礎疾患が悪化した事象と考えられ得るもの、あるいは医学的資料が不十分で検討ができないものなどであり、現時点でタミフルとこれらの死亡についての因果関係が明らかなものはなかった。
 我が国におけるタミフルの添付文書には、重大な副作用として精神・神経症状の記載が平成16年5月より追加されている。添付文書における副作用の記載は、一般に、治験によって得られた有害事象等の検討に基づいたものに加えて、市販後調査によって医師から提供された情報についてその因果関係を否定することが困難であるものも含め、厚生労働省担当部局とメーカーの協議に基づき、予防警告的な意味合いを持って適宜追加記載されているものである。
 従って医学的因果関係が明らかになったものだけが含まれているわけではないという理解のもと、今後も我が国において十分な市販後調査が継続され、その結果が国内においても適切に公表されることを望むものである。

 一般診療におけるタミフルの使用については、従来通り投与の適応や症状の経過観察等への注意が必要であるが、現時点ではその使用に対して改めて注意勧告などを行う状況ではないと考える。

以上

参考:

  1. 米国の小児諮問委員会の提出資料
    http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/oc05.html#Pediatric
  2. 厚生労働省のリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)に関するQ&A
    (新型インフルエンザに関するQ&AのIVとして掲載)
    http://www.mhlw.go.jp/
  3. 医薬品・医療用具等安全性情報 No.202
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0624-2/index.html


(登録:05.09.26)


■■ 予防接種(日本脳炎ワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン)の変更およびそれに関連する麻疹、風疹ワクチン勧奨と接種控えの問題について

 予防接種法施行令の一部を改正する政令、予防接種法施行規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令が、平成17年7月29日に厚生労働省から公布されました。

 主な改正点は
1)平成17年7月29日より、日本脳炎ワクチンの定期接種第3期の中止
2)平成18年4月1日より麻疹ワクチン、風疹ワクチンの接種方法、接種スケジュールの変更(2回接種法の導入、MR混合ワクチンの採用)
です。

 麻疹、風疹の接種は、1期、2期の2回接種となり、いずれも麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)のみが使用されることになります。
 1期の接種期間は「生後12月から生後24月に至るまでの間にある者(すなわち1歳児)」
 2期の接種期間は「5歳以上7歳未満の者であって、小学校就学の始期に達する日の1年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にある者(すなわち小学校入学前年度の1年間(4/1〜3/31))」となります。

 2期のMRワクチン接種を受けられるのは、現時点では1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)であることが原則の考え方となりますが(*)、今後、その安全性・有効性が確認されれば、麻疹単味ワクチン、風疹単味ワクチン既接種者への2期のMRワクチン接種の導入が予定されています(**)。
 なおそれまでに「麻疹ワクチン、風疹ワクチンのどちらも未接種」かつ「麻疹、風疹のどちらも未罹患」の者は2期の対象年齢に1回目の接種として受けることができます。

 「麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができない、との経過措置があります(***)。
 また「麻疹または風疹にかかった者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができないことも明記されています。これについては、今回の改正によるものではなく、予防接種法施行令第1条の2に既に記載されている「当該疾病にかかっている者又はかかったことのある者(インフルエンザにあっては、インフルエンザにかかったことのある者を除く。)その他厚生労働省令で定める者を除く。」ことによるものである、と説明されています。
 これらの対象者には、任意接種の枠組みで、自治体の公費負担で受けられるようにとの自治体への要請(通知)が厚生労働省結核感染症課より出されています。この任意接種によって万一の健康被害が生じた場合、医薬品医療機器総合機構法に基づいて被害救済がなされることになり、担当接種医については故意または重大な過失がない限りその責任を問われるものではありません。

 これまでに麻疹については1歳のお誕生日をすぎたらなるべく早く麻疹ワクチン接種を(生後12〜15ヶ月を標準に)、そして麻疹ワクチンが終わったらそのあとには風疹ワクチンを、というキャンペーンを各方面で熱心に実施して頂いているところです。その効果は最近の麻疹罹患者の著しい減少として現れています(国立感染症研究感染症情報センターホームページ)。麻疹・風疹対策の基本は、幼児早期でのワクチン接種率を高めることであり、これによりこの年齢層の罹患者数を抑えることが先ず第一であることには変わりありません。
 従って平成18年4月1日からの制度改正までは、これまで通り、その間の対象者には、速やかに接種をすすめることが必要です。ことにこれまでに未接種となっている対象者や、平成18年4月1日以降で2歳以上になってしまう子どもたちには、麻疹・風疹の早期予防として、平成18年3月31日までに麻疹、風疹の単味ワクチンをそれぞれ接種しておくべきと考えられます。
 今単味ワクチンの接種を受けてしまうと2期のMRが受けられなくなる、またまもなくMRが実施になるので今2回を接種する必要はなく4月まで接種を控えてはどうか、という考えもあるようですが、現時点で麻疹風疹ワクチンの接種を控えることは、両疾患に対する感受性者が増加することであり、疾患予防の観点からは勧められません。ただし、3月になり4週間間隔の生ワクチンをそれぞれ2回接種する時間がなくなった時には、流行状況などをみながら4月のMR出現を待つのはやむを得ないことと考えられます。

 この時に問題になるのが、(*)2期のMRワクチン接種を受けられるのは、1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)が原則であること、そして(***)麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者は、定期接種として他方のワクチンを受けることができない、との経過措置ですが、これについては厚生労働省による研究班を立ち上げ、なるべく早く単味麻疹、および単味風疹ワクチン接種者へのMRワクチン接種が問題ないことを確認しようとする計画が動いています(**)。これらの研究の結果、この方式による効果と安全性が明らかになれば、経過措置は速やかに外されることが厚生労働省結核感染症課より言明されているので、平成18年3月末までにそれぞれのワクチン接種を受けた人が2期接種の対象年齢になった時にMRワクチン接種ができなくなる可能性は極めて低く、将来の2期接種を考慮して現時点での単独ワクチン接種を控えることは得策ではないと思われます。
 なおこの研究について日本小児科学会予防接種感染対策委員会は全面的に協力する姿勢を表明しています。

 今回の予防接種の変更によって、麻疹・風疹ワクチンの2回接種方式およびMRワクチンの導入が図られたことは高く評価されますが、その詳細については日本小児科学会の意見が反映されていない部分もあり、また実施にあたっての問題点が各方面から指摘されているところです。
 日本小児科学会予防接種感染対策委員会では、麻疹および先天性風疹症候群の制圧(elimination)に向けて、より良い方法への改善について今後も提言を続けて行きますので、会員のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

参考資料:
麻疹および風疹定期予防接種新制度の概要(平成18年4月1日施行)(PDF)
平成18年4月1日からの予防接種スケジュール表(PDF)
(資料作成:国立感染症研究所感染症情報センター)



■■ 水痘ワクチンの定期接種化に関する要望書

平成17年7月24日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人 日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染により水疱、発熱を主症状とする小児期によく見られる急性疾患である。感染力は麻疹同様に強く、10歳までに約90%の小児に感染する。健康小児では発熱とともに掻痒による不快感が強く我国では多くの例で抗ウイルス薬のアシクロビルが用いられている。成人水痘は重症化しやすく死亡率も高い。合併症として頻度の高いものは、水疱部位の細菌性2次感染症で1〜4%にみられ、劇症型A群連鎖球菌感染症や敗血症などの全身性致死的疾患に進展することもある。中枢神経系の合併症としては、髄膜脳炎や小脳性運動失調症があり、発症頻度は水痘1,000例中1例近くといわれる。約80%は回復するが、後遺症を残す例、死亡例(本邦推計:年間20〜25例、人口動態統計:平成4〜15年103例)も存在する。
 本症は水痘生ワクチンで予防できる。1974年、我国で開発された弱毒ウイルス岡株はWHOに認められ世界で唯一、ワクチン産生用として評価が定まっており、我が国のみならず欧米でもワクチン産生用に用いられ水痘ワクチンとして100カ国以上で認可・使用されている。本ワクチンの有効性、安全性は国内外の報告で確認されており、我国では1987年以降、任意接種として健康小児に用いられている。しかし、任意接種であるがため、これまでのところ接種率は約30%程度にとどまっており水痘の疫学状況を変えるまでに至っていない。一方、米国では1995年以降、岡株ワクチンを定期接種化し2003年には接種率は85%に達し、水痘流行の減少、水痘関連死亡・合併症の減少、水痘による入院・入院費用の減少などの効果が明らかになっている。
 本ワクチンの問題点として、ワクチン被接種者の中で、後に10〜15%で水痘罹患が見られることが挙げられている。しかし、その臨床像は、発疹の数が50個以下の軽症例であり、中等症・重症の水痘は完全に防止することができる。米国ではこのことが重視されている。
 しかし一方、ワクチン接種率が中途半端な程度にとどまると成人における水痘を増加させる恐れがある。また接種率が今より向上し自然水痘が少なくなれば被接種者においてブースターがかからなくなり、ワクチン接種を受けた人が、後に免疫が薄れた頃、水痘に罹患するケースが増加することなどが言われている。これらの点は、まさに麻疹ワクチン、風疹ワクチンなど生ウイルスワクチンに共通の問題で、接種率を90%以上に維持する努力、将来的には2回接種法の導入などで解決される問題である。
 以上のように水痘ワクチンの定期接種化により、1)水痘流行の減少・排除、2)関連死亡・合併症の防止・減少、3)水痘発症者に対する、種々の医療費の減少などによる良好な対費用効果、さらには4)水痘罹患後にみられ、年長者や老人を悩ませる帯状疱疹発症の防止も期待できる。このように水痘ワクチンの定期接種化は小児のみにとどまらず、国民全ての人々に有益であり、公衆衛生的、医療経済的にも意義が高いものである。
 前回の予防接種法改正時ならびに今回の「予防接種に関する検討会」でも定期接種化について委員の合意が得られているワクチンであり、日本小児科学会として改めて水痘生ワクチンの定期接種化を強く要望するものである。


(登録:05.06.30)


■■ 病院小児科医の将来需要について

(登録:05.06.30)


■■ インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書

平成17年6月26日

厚生労働省 医薬食品局
審査管理課長 川原 章 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書

Hib感染症は小児にとって国内外において比較的発生数の多い小児感染症の一つであり、中でもHib髄膜炎および敗血症は重篤な疾患として小児の健康上大きな問題であります。しかし本感染症は海外においてワクチンが開発実用化されており、ワクチンによる予防可能な疾患となってきております。諸外国においてはHibワクチンを導入する国が増加しており、導入した国ではHib感染症は稀な疾患となってきております。

一方、わが国ではHibに関する疫学データーが整い、ワクチンに関する治験も終了しているにもかかわらず、未だHibワクチンが使用できない状況にあり、毎年5歳未満人口10万人あたり少なくとも8.6〜8.9人、すなわち年間500人以上の子どもたちが自然感染としてのHib髄膜炎に罹患しています。抗菌剤による治療にもかかわらず、これらの患児のうち約5%(毎年25人以上)が死亡し、約25%(毎年125人以上)に永続的な神経学的後遺症が残っております。Hib髄膜炎は一度罹患すると予後不良の経過をとる割合が高く、抗菌剤が有効であっても発症後の治療には限界があり、罹患前の予防の重要性が強調されるところです。近年ではさらに、抗菌剤に対するHibの耐性化が急速に進展してきており、Hib感染症が更に難治化する傾向にあります。また、Hibは飛沫感染により伝播することから、早期保育など乳幼児における集団生活機会の増加により、小児がHib感染症に遭遇する機会が増加してきており、感染者の増加が危惧されております。

このようなHib髄膜炎の現況を鑑みますと、小児の健康を守る立場として、当学会はHibワクチンによる感染予防が我が国においても可能となる時が一刻も早く来ることを強く望んでおります。

 Hibワクチンは1980年代後半から海外において広く使われ始め、既に約20年間の使用実績があります。WHOは本ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、1998年に世界中の全ての国に対してHibワクチンを定期接種に組み込むことを推奨しております。その結果、1998年以降、世界各国おいて定期接種化が進み、現在ではアジアやアフリカの国々を含む100カ国以上で広く使用されております。またHibワクチンを導入した国々では、明らかにHib感染症が激減しております。
海外での長年にわたる、そして多くの国々での使用実績、および国内での治験成績から、Hibワクチンの有効性と安全性は現在国内外で使用されているワクチンと比較して遜色のないことが明らかであり、当学会はHibワクチンを安全で優れたワクチンであると評価しております。また、本ワクチンはその製造過程でウシ由来成分が使用されていることからこれに伴うプリオン伝搬の問題が極めて稀ながら理論上のリスクとして他ワクチンと同様にあること、厚労省ワクチン問題検討会に於いて参考人である研究者よりHibワクチンに含まれるエンドトキシン量がDPTワクチン等よりも多かったとするデーターを発表したことなどについては当学会は承知しておりますが、現在の国内小児がおかれているHib感染症のリスクと、プリオン伝搬あるいはエンドトキシンが含まれることによって生ずるかもしれない理論上の稀なリスク、そしてワクチンによって受けるベネフィットを勘案すれば、Hibワクチンの使用によって、小児の受ける利益は遙かに高いものであると考えております。

しかしながら、我が国においてワクチン関連企業による使用認可に関する申請が、国に対してなされてから既に2年以上が経過しているにもかかわらず、その理由が明確ではないまま審査が遅々として進んでいない状況にあると聞き及んでおります。依然Hib感染症が日本に住む小児に与えている健康障害の存在、WHOによるHibワクチン定期接種化の推奨、海外における同ワクチンの使用実績および国内治験成績などから、わが国においても小児に対してHibワクチンが速やかに使用出来るようになる事は、小児の健康を守ろうとする当学会の強い願いであります。一方このままの状態が続き本ワクチンの使用機会を逃すことが今後もさらに続くようでは、新たな社会問題となることも危惧されます。
わが国においてHib感染による健康被害がこれ以上存続しないよう、日本小児科学会はHibワクチンの導入に向けて迅速な審査が執り行われることをここに要望します。




(登録:05.06.30)


■■ 麻疹及び風疹定期予防接種の2回接種の導入および
その接種スケジュールについての要望

平成17年6月26日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

麻疹及び風疹定期予防接種の2回接種の導入および
その接種スケジュールについての要望

 感染症発生動向調査によれば、過去10 年間には年間約1〜3万人の麻疹患者が報告されてきましたが、各方面の理解と努力により平成15 年は8,285 件、平成16 年は1,554 件(暫定値)と、患者報告数は減少傾向にあり、推計値も数年前における年間20−30万人から、年間1−2万人まで減少しております。しかし、すでに麻疹Eliminationをほぼ達成した米国、韓国等と比較すれば、依然として、数多くの患者が発生している状況にあります。このため、今後も麻しん予防接種の一層の推進に各関係機関、関係者が努力すべきであります。一方、患者数減少に伴い野生ウイルスによるブースター効果が弱まり予防接種によって付与された免疫力の低下が今後生ずることが予測されること、及び接種率の増加に伴ってprimary vaccine failure も蓄積されることから、さらなる麻疹発生数の減少のためにはWHOが推奨する高い接種率の維持に加えて複数回のワクチン接種を導入することを、我が国においても実施する段階に達していると考えられます。
 風疹の予防接種は、風疹流行を阻止し、妊婦感染を防ぐという考え方に基づき、現在「生後12 月から生後90 月に至るまでの間にある者」を対象