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子どもの食(食育)

食育レポート
(食育シンポジウム)
─食で育もう 子どもたちの未来─


食育レポート(食育シンポジウム)─食で育もう 子どもたちの未来─

パネルディスカッション
「はじめよう!食べるネッサンス」

●お母さんが楽しくなければ、子どもも楽しく食べられない

 榊原 私は小児科医をしておりますが、皆さんの生活の中で医者が登場するのは、大抵あまり楽しくないときですよね。確かに、医者にとって食事は非常に重要で、食に関して医者が登場すると、「それはいけません。カロリー制限しましょう。こういうものを食べましょう」といったことを言う役割をします。でも今日は、小児科医の立場から、子どもが楽しく食べるためには、お母さんお父さんなど保育する側が楽しくないと楽しくない、ということを簡単にお話したいと思います。
  赤ちゃんがしていることをすごく大ざっぱに言うと、“成長”と“発達”です。成長は体が大きくなることで、小さい赤ちゃんでもそのための仕組みがちゃんとあり、赤ちゃんに「これは何カロリーあるから、自分のために食べなさい」なんて言っても判りませんが、きゅう吸てつ綴反射で、乳首がそばにくるとちゃんと自分で吸おうとしてくれる。空腹感もあるので、おなかがすくと多くの場合泣く。それでお母さんはおっぱいをあげる。自然にそういう仕組みができているのです。

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●赤ちゃんの性質
  ――「未知のものに興味を持つ性質」と「愛着行動」


榊原 洋一 氏 次に発達についてですが、子ども、特に赤ちゃんは発達する最初の過程で、世の中を一生懸命観察します。赤ちゃんの中には二つの行動の原則があります。一つは「新奇性追求」。新しい世の中に適応してくために、未知のものに興味を持って探求することです。子どもは同じものばかりがある と、赤ちゃんでも飽きてしまう。ですが、やはり何でも新しいことばかりに気をとられていると、赤ちゃんは生きていけません。そこであるのがもう一つの「愛着行動」です。自分が安心できるようなところに対して、特に自分の世話をしてくれる人のそばにいようという気持ちがある。ところがやがて離乳期の葛藤が始まります。赤ちゃんの保守性とは、乳首への愛着です。離乳食を始めようと思っても、乳首からじゃないと飲んでくれない。乳首から飲んでいれば安全だからです。加えて、新しい味に対しては抵抗する。時には舌で押し出したりするので、一生懸命離乳食をつくったお母さんにしてみれば、ストレスになります。この時期は、体重急増終了期と重なります。母子手帳にあるように、大体4カ月ぐらいまで体重は増えそこから急に増えなくなります。その時期が前離乳期と重なるので、体重が増えないことがまたストレスになるわけです。しかも外野から、特に小児科医が「お母さん、ちょっと体重が」なんてささやくわけですね。さらにお母さんや保育者側には、離乳食を何回食にしましょう、などといったスケジュール闘争があります。標準はあった方が良いですが、時にそれを厳密に守ろうとすると、2回食べなくちゃいけないのに、まだ1回しか食べていない、母乳が少し足りないかも、ということで、葛藤があるわけです。赤ちゃんの側では「新しいのは嫌だ。舌の使い方が判らん。今まではずっと吸っていればよかったのに、なんでかまなくちゃいけないの」と言いたくなるのですね。一方お母さんからすれば時間がない。

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●離乳食は楽しく食事をはじめる最初の体験

 皆がこうではありませんが、こういうことがあると、離乳食が始まるこの時期が、キーワードの「楽しく食べる」のに、ハードルになることがある。私たち小児科医も、よかれと思って「これだけのカロリーを摂りましょう」と言うのですが、特に几帳面なお母さんほど、負担になってしまうことがあるのです。本来は楽しいものなのですね。それに、食事をつくってあげることはやはり最高の愛情表現なんです。たとえばキス。どうして人間はキスをするようになったかというと、フードキスという仮説があります。離乳食のころ、最初は口の中でやわらかくしてあげる。今はあまりやりませんが、口移しに食べ物をあげるのは愛情の表現です。
 けれども、幾つか乗り越えなくてはいけないハードルがある。私が手抜きをしてもいいと言うと誤解を招きそうですが、スケジュールにそんなに縛られなくても平気なのです。日本では、どちらかというと肥満が多いぐらいの状況ですから、気楽にやっていいですよ。食事がとれなくて栄養失調になってしまうような子はほとんどいません。基本的に健康な子どもは食欲がありますから、おなかが空けば食べてくれる。このことを信じて、子育てをしていただいたらいいでしょう。そういうことで小児科医のざんげも兼ねまして、
楽しく食事を始める最初の経験である離乳食については、ある程度手抜きをしても平気ですよということを、とりあえずお話ししておきます。

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●母親として
――
離乳食で悩んだ末、
楽しんで食べることの大切さに気付いた
     
奥山 佳恵 氏
 奥山 私は先生方のようなすばらしいお話ができるわけではないので、一母親として今日は参加させていただいています。私も、離乳食期のスケジュール闘争にまんまと巻き込まれた母親の1人だったのではないかと、今になって思います。 初めての我が子に、いろんな栄養あるものをあげたいという気持ちがつい先走って、結局は自分の首をどんどん締めて、最後は、本当に子育てそのものが楽しくなくなったことが何度かあります。 でも本来、食事とは楽しいものですよね。子どもがいようがいまいが、食事そのものは楽しいことには変わらないはずだということに気がつき、堂々と明るく手抜きをしていこうと決心しました。そして現在に至ります。離乳食期も終え、息子もおかげさまで無事大きくなることができました。今は好き嫌いが出始めています。食がもともと細いので、あまり食べてくれない。特に好きなものしか食べてくれないという困った時期ですけれど、その中で、速くて簡単で栄養たっぷりで、どうすればいろいろなものを与えることができるかというので、子どもが好きなカレーにお豆腐を混ぜてみたりしています。そうすると、大人のカレーでも味もやわらかくなるし、栄養もとれるし、温度的にも食べやすくなるし、これはちょっといい手だなと思っています。そうやって息子をだましだまし、私の手間も省き省き、楽しく食事づくりに励んでいるところです。 食事で気をつけているのは、私がストレスを感じないようにつくるということ、それから一番大事だと思っているのは、なるべく楽しんで一緒に食べようということです。食事は本来楽しいものなのですよね。それを忘れないで、これからも食事づくりに励んでいこうと思っています。

 好本 ありがとうございました。さて、先生方にお話を伺い、楽しく食べる、食を楽しむということがとても大きな柱であることが判ってきましたが、そんな中でも、スタートの離乳食で、楽しく食べることに挫折してしまっているところがあるように思います。実際に先生方は、それぞれの立場で子どもたちに接し、たくさんのご家庭を見ていらっしゃいますが、子どもたちの食の実情はどうなっているのでしょうか。星さん、どうでしょう。

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